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降谷side
「……まさか、その中に」
Aはふっと、力なく笑う。
「父さんと母さん、いたんだって」
「……」
他人事のようにたんたんと話していく。
しかし、彼女の目は、暗く濁っていた。
「あとね。入り口のところに立ってた警備員さん、…私が殺したあの警備員さん、……兄ちゃんだったんだって」
「…っ、でも、警備員は知らない人だったんだろう?」
「顔はね。命令されて整形でも変装でもしたんじゃないかな。……私に殺されるために」
いくらなんでも受け止められなかった。
大切な人を知らないうちに自らが手にかけていた。
家族を守るために戦っていたのに、その家族を自分が殺した。
あまりに、あまりにも、残酷すぎる。
組織の恐ろしさは、身をもって知っているつもりだった。でもこれは、……許せない。
他に言葉が出てこなかった。
なのにAはへらりと笑う。
「零さんなんて顔してるの?怖いからやめてよー」
「どうしてAは、そんなに笑っていられる…?俺は…、そんなの、耐えられない…」
「なんでだろね。私にもよくわかんない。でも、零さんがそんな顔することじゃないよ?」
Aは俺の顔を覗き込んで、またへらっと笑った。
……幼い。
わかった。
彼女は、感情が幼いんだ。
組織にいた頃から、『言うことを聞けば褒めてもらえる』。
それしかわからないんだ。
だから、家族を失ったことへの感情を理解することが出来ていないから、どうしようもなくなって、笑っている。
なんて……かわいそう。
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時雨(プロフ) - まことさん» ご意見ありがとうございます。読み始めてもらえて嬉しいです!参考にさせていただきます。 (2019年10月18日 7時) (レス) id: c6320779fa (このIDを非表示/違反報告)
まこと(プロフ) - 3でお願いします 新たに読み始めたので続きが気になります (2019年10月16日 17時) (レス) id: 9abb2adce4 (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - ☆三日月☆さん» ご意見ありがとうございます。何年でもなんて嬉しすぎます!参考にさせていただきます。 (2019年10月15日 19時) (レス) id: c6320779fa (このIDを非表示/違反報告)
☆三日月☆(プロフ) - 何年なっても待ち続けるので3でお願いします! (2019年10月14日 16時) (レス) id: 0e61e2fc0f (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - あーちゃんさん» ご意見ありがとうございます。面白いストーリーや、もったいないなど、すごく嬉しいです!参考にさせていただきます。 (2019年10月8日 12時) (レス) id: c6320779fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:時雨 | 作成日時:2019年7月15日 13時