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コンコン

「雫?ちょっといいか?」


降谷さん?

もう寝ようとしていたのに、どうしたんだろう。


恐る恐る扉を開ける。

でも特に変わった様子はなく、彼はいつも通り優しい顔をしていた。



「どうしたの?」

「ああ、大したことじゃない。明日、帰ってくるのが遅くなるから、先に寝ていてくれ。夕飯は用意しておくから」

「……お仕事?」

「まあな」

「頑張ってね」

「ああ。ありがとう」



ポンポン

降谷さんは笑って、また頭を撫でる。


またか。

私は離れようとする彼の指を掴んでぐいっと引っ張る。



「…なんだ?」

「こっちのセリフ。……降谷さん、何でそんなに頭撫でるの?」

「……嫌だったか?」

「ううん。気になっただけだけど。よく撫でるなって」

「…なんか、悪いな」



違う。

謝って欲しいんじゃなくて。

理由が知りたいだけ。









降谷さん、あなたはどうして、頭を撫でる時、そんなに悲しそうに笑うの?








パッと見ただけじゃ、普通に明るく笑ってるようにしか見えない。

でも、ずっと見ていたら、少し違いがわかってきた気がする。

話しているだけの時と、私に触れた時の笑顔。




「多分、無意識だ。気にしないでくれ」

「そう…」



無意識に、そんな顔するの?

少し悲しい。



「明日も学校だろ。おやすみ」

「おやすみなさい。頑張ってね」

「ああ」



そっと手を離す。

パタン

扉が閉まって、足音が遠ざかる。




……彼の手、ほとんど気づかないくらいだけど、少し力がこもっていた。


今日帰ってきた時、組織と電話をしていたようだし、仕事というのは多分組織絡みのものだろう。



私は初めから組織にいたから、潜入する人の気持ちなんて、わからない。


でも、きっと予想以上に気を張って、警戒して、精神をすり減らしていくものなんだろう。



大丈夫、かな。





ううん。

今までずっと上手くやってきたから、こうして彼は生きてるんだ。

明日だって、大丈夫だ。

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時雨(プロフ) - ロゼさん» こちらこそリクエストありがとうございました!楽しかったです。 (2019年4月2日 13時) (レス) id: c6320779fa (このIDを非表示/違反報告)
ロゼ(プロフ) - リウエスト書いて頂きありがとうございました。とても面白く出来上がっていて凄かったです。 (2019年4月2日 8時) (レス) id: 8878c6576c (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - 匿名さん» 感想ありがとうございます。続きも書いてみましたので、楽しんでいただければとても嬉しいです!! (2019年3月29日 23時) (レス) id: c6320779fa (このIDを非表示/違反報告)
匿名 - 途中ではありますが読んでてすごくいい話で続きが楽しみです!リクエスト書いて頂き本当にありがとうございます! (2019年3月29日 0時) (レス) id: 24edc1aa4d (このIDを非表示/違反報告)
時雨(プロフ) - loveharuma0927さん» なるほど…。学校行事は思いつきませんでした!二人とも普段通りを装いながら内心はしゃいでそうですね…!面白そうなご提案ありがとうございます!もっとニヤニヤして頂けるように頑張ります! (2019年3月26日 21時) (レス) id: c6320779fa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:時雨 | 作成日時:2019年2月16日 8時

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