106話 ページ10
翌日海堂先輩のところに尋ねてみると相変わらず元気がなかった。当然だろう。何せ、麻里が婚約したのだから。
「海堂先輩」
海堂先輩は何かを考えるように俯く。ああ、何て憐れな姿なのだろう。何て……
「海堂先輩。聞いてますか?」
「Aちゃん」
海堂先輩は突然私の腕を引っ張り、私をベットに押し倒した。え……何この展開……
「え…?あ、あの海堂先輩?」
私はそう言ったけど、海堂先輩は怖い顔をしたままで。思わず怖い、と思ってしまった。
「……ごめん」
海堂先輩はそう言って元の位置に戻っていく。な、何だったのだ……今のは
「本当にごめん。Aちゃん。今日はもう帰ってほしい」
「……わかりました」
確かにこんな状態で話は出来ないだろう。ベットに押し倒されたときはとても驚いたが。…多分、私と麻里を重ねたのだろう。
「(……不覚にも少しだけときめいてしまったとか言えないわ)」
しかも、麻里を重ねている場面だったのに。私はそう思いながら、ため息を吐いた。
海堂side
「なにやってるんだろ俺」
俺はそう言いながらため息を吐く。Aちゃんが麻里姫に見えて俺は思わずAちゃんを押し倒してしまった。
「……最低だな」
きっと麻里姫に言ったらビンタどころの話では済まないだろう。自分でも最低だと思うし。
「本当にごめん……Aちゃん」
俺はそう言いながら、とあることを思い出す。……思えば彼女はいつも隣にいてくれた。アンリ先生と麻里姫が幸せそうに踊っていた時もそして今だって……
「(だからなのだろうか)」
胸がどくん、と緩やかに鳴っているのは。俺はそれに気付かぬように俺はベットに顔を埋めた。
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作者名:かんな x他1人 | 作成日時:2020年8月2日 22時