107話 ページ11
「…アンリ先生どういうことなんですか?麻里のこと…好きではなかったのですか?」
私がそういうと、アンリ先生は優雅に紅茶を飲んでいる。こ、こんなときなのに!……そういえば…私はふっと思い出した。それはフランス高に入る前に麻里から電話で教えて貰った…『アンリ先生に避けられている』という話を思い出し、私はおもむろに口を開く。
「そういえば遠い昔に麻里がこう言っていたんですよ。最近アンリ先生から避けられているって。それは今もそうなんですか?」
「……避けてなどいませんよ。今も昔も」
……嘘だ。だってアンリ先生の瞳が少し動揺していたから。アンリ先生ってこんなに嘘が下手なのね……少し意外。私はそう思いながら口を開きかけたとき、扉が開いた。
「アンリ先生!」
その声の主はいちごちゃんであった。アンリ先生は一瞬驚いた表情をしていたが、すぐ笑顔になりメイドにお茶の追加を命令した。
「それでどうかしましたか?いちご」
「どうもこうもないですよ!アンリ先生は何も思わないのですか?教え子が好きでもない人と結婚するだなんて!」
いちごちゃんの言い分に私は全力で頷く。そもそも、麻里が婚約したのは天王寺家の経済が傾いた為だ。小城さんが助けてくれたし、結構支援してくれたのだが……それでも厳しいらしい。
「そうよ!アンリ先生も見たでしょ。あの麻里の死んだ魚のような目!」
どう考えても麻里はあんな奴と結婚するのは間違っている。麻里がアンリ先生を諦め、本当にあの人と結婚したい、と思ったのなら話は別だが……
「……いちごもAも落ち着いて」
そう言ってアンリ先生は私といちごちゃんにケーキを勧める。……私といちごちゃんは釈然とはしなかったが食べた。‥…美味い。流石アンリ先生だ。
「……これが麻里の結婚式で出されるケーキですか」
私がそう言うと、アンリ先生は嬉しそうに説明し出した。
「こんなに天王寺さんを理解しているのは好きだからのではないのですか?」
と、いちごちゃんがそう言うとアンリ先生の顔がまた赤くなった。……アンリ先生?それは肯定だと受け止めますけど?私がそう言いかけたとき、電話が鳴りアンリ先生は部屋の外へと出て行った。私はいちごちゃんの方を向きながら口を開いた。
「…ねぇ、いちごちゃん」
「うん。分かってるよ。Aちゃん」
流石いちごちゃん。私の言いたいことが分かるなんて。じゃあ……
「アンリ先生を素直にさせましょうかー。私達で」
私がそう言うといちごちゃんは嬉しそうに頷いた。
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作者名:かんな x他1人 | 作成日時:2020年8月2日 22時