108話 ページ12
「……アンリ先生!」
……うわっ。麻里の婚約者だ……私はそっとその場を離れようとしたが……
「結婚してもパティシエールは続けさせるつもりで?」
「まさか。あんなダサいものは撤去して毎日うちの豪華なドレスを着させますよ」
そんな会話が聞こえてきた。は?いや、麻里はパティシエールなの!そんな身勝手なことで麻里の夢を壊すな!と、言ってやりたかった。だけど、アンリ先生がなんとも言えない表情をしている。
「これは……もしかして?」
やっと、気付いたのか!自分の恋心に!私は嬉しくなったのと同時に何処か寂しくもなった。
「(海堂先輩大丈夫かな……)」
そう思った直後、私を呼ぶ声がして振り返った。
「A。大丈夫かしら……私…」
こんな弱気な麻里を見るのは初めてだ。私は麻里の肩を優しく叩きながら麻里にこう言った。
「大丈夫!私が保証するわよ!麻里は綺麗だから!」
「そういう意味ではないのだけど…でも、ありがとう。A。お陰でちょっと勇気が出たわ」
その勇気いい方向なんですよね!?と私は心の中で叫ぶが、麻里には当然届かなかった。
ーー大会ーー
「よーし、いよいよ私達の番ね!といっても私は見ているだけだけど」
「けど、本当にいいの?今回Aちゃんがほとんどしてくれたじゃない…」
そう、今回のスイーツの衣装はほとんど私がやった。勿論みんなも手伝ってくれたけどデザインを担当したのは私だし、指示したのも私だ。だけど、それは…
「ええ。だって私は目立つのは好きじゃないのよ。それに今回のはアンリ先生と……」
私がそう言うと、麻里以外は意味がわかったように頷く。麻里は不思議そうな表情をしていたが…
「エントリーナンバー!17番!」
「あ、ほら呼ばれてるわよ!」
私はそう言って四人をステージの上に誘導する。残りは私と麻里だけになった。
「ねぇ、A。先のはどういう……」
「どうも何もそのままの意味よ?ま、見てみなさい」
私がそう言うと、いちごちゃん達はリハーサルとは全然違うことをやりだした。その違いに麻里は目を見張るが、「ハニーパイ」が出て来た時顔色が変わる。
「ハニーパイ……」
「皆麻里の為にやってくれてる。なら、麻里がすることは一つ」
私はそう言いながらいちごちゃん達を見る。いちごちゃん達は出番が終わり、真剣な表情で麻里を見つめる。
「天王寺さんこのままアンリ先生の胸に飛び込んでください」
と、そう言った。
140人がお気に入り
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:かんな x他1人 | 作成日時:2020年8月2日 22時