【実況者】本当の君。 (ページ5)

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唐突に視界が真っ白に染まる。
驚きに声を上げた私と真美を包んだのは、ベットシーツだったらしい。
ごそごそと顔を出して後ろを振り返れば、シーツを被せてきた人物が視界に入る。

「…あれ、コンビニの…？」

真っ黒なパーカーに付いたフードを深く被って、白いマスクをつけた長身の彼に見覚えがあった。
コンビニのペットボトルコーナーの前で迷っていた人だ。
彼の手にもたれている袋を見て、納得する。
その袋は、私がコンビニで購入したものだったからだ。

「わざわざ、追いかけて来てくださったんですか…！」
「コレ、財布入ってたんで…。」
「ありがとうございます。警備員さんも、貴方が？」
「盗み聞きしてすみませんでした、でも、呼んでおいてよかったです。」

財布の入ったコンビニ袋を受け取って、頭を下げた。
警備員さんを呼んでくれたのも彼で、このシーツだって私と真美のみっともない姿を大衆に見せないようにという配慮からだろう。
頭の回転も早くて、とても気遣いの行き届く人だと驚いた。

「ありがとうございました。あのままだったら、目も当てられない事になっていたでしょうし。」
「いえ、それじゃあ俺はこれで…。」
「あ、少々お待ちください！」

このままではお礼ができない、と私は咄嗟に静止をかけて立ち上がる。
一瞬、グラッと視界が揺れた気がしたが、表に出さない方に自分のバックから名刺ケースを取り出した。
一枚取り出して、困惑しているような彼に両手で差し出す。

「もし、ご迷惑でないようであればこちらの連絡先にお電話頂けませんでしょうか？1週間ほど北海道に滞在する予定なので、何かお礼をさせて下さい。」
「いや、あの…。」
「いらないようであれば、もちろん捨てていただいて構いません。お礼したいというのは私のわがままなので。本当に、ありがとうございました。」

差し出していた名刺が、指先から抜き取られる。
細いけれど、男の人らしく節張った、綺麗な手だった。

「…頭、ちゃんと医者に見てもらってください。」

名刺を手にした彼は、チラッと私の頭ら辺を見てから眉を下げて笑う。
どうやら、彼は観察眼も優れているようだ。
私のささやかな虚勢は、見事に見破られてしまったらしい。
ゆるりと下がった目尻が、印象的だった。