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「Aさん、寒くない?」
「はい。わざわざ送っていただくことになってしまってすみません。」
「いーの。今日はガッチさんが酔っ払ってるから実況とれないし、思ったよりも遅くなっちゃったし。」
「皆さん仲がよろしいんですね。」
「んー、まあ付き合い長いし、定期的に一緒に実況撮ってるしね。」
隣を歩く清川さんは照れ臭そうに笑う。
個室での会話からも察したが、彼らの間には年齢とかそういう垣根を越えた友情があるのだと思う。
名前ではなく、ハンドルネームを呼び合うことの多いらしい彼らに何度釣られたことか。
「キヨ…かわさんは、ご自宅はこっちなんですか?もし遠いようでしたらタクシー代お出しさせてください。」
「ふはっ、あんま大っきい声じゃなきゃキヨでもいーよ。そっちの方が呼びやすいでしょ。レトさんたちも、なんなら名前よりもこっちの方が反応するし。」
「本当ですか?皆さんとお話ししてたら、どうも移ってしまって。」
「敬語も良いのに。あとタクシー代は受け取りません。こんなに遅くなっちゃったのは俺たちの所為だし。」
スマートな人だなぁ、と思う。
四人で話していた時の彼は少し子どもっぽくて無邪気なイメージを持ったのに、二人になるとスッと大人びる。
ただ、食事中も飲み物が空になったり、取り皿が空いているのにすぐ気づくのも彼だった。
もちろん、私がイレギュラーな存在だったら気にかけてくれていた可能性もあるだろうが。
「Aさんさ、あの男と仕事場一緒なの?」
「あの男…軍司さんのことですね。そうです、こっちにいる間だけなんですが。」
「ホテルとか、バレてない?大丈夫?」
「さ、すがにそこまでするとは思えない、ですけど。」
「後ろつけて来てたのに?」
キヨさんの言葉に、つい黙ってしまう。
確かにしつこさは少し異常だったし、本社に提出している書類の中には滞在するホテル名の記載もある。
後ろをつけて来ていたのだって、キヨさんが気づいてくれなければと思うとゾッとする。
「俺、今週末はちょっと仕事関係で忙しいんだけど。」
「…はい…?」
「月曜だったら夕方から開けられる…ので、神社行こう。近くの。」
「……神社?」
「うん。俺がいつも行ってるとこ。うっしーじゃないけど、お祓いみたいな?」
たまには神様だよりもいいんじゃない?
そんなふうに言ったキヨさんは、ゆるりと目尻を下げて笑った。
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A.M(プロフ) - minmiiさん» ありがとうございます。がんばります! (2022年9月30日 0時) (レス) id: 1b56a79d5d (このIDを非表示/違反報告)
minmii(プロフ) - ほんとに好きなお話です!応援してます♡ (2022年9月22日 0時) (レス) @page16 id: 8a547e8f1d (このIDを非表示/違反報告)
A.M(プロフ) - ぬん さん» 嬉しいです〜!ありがとうございます! (2022年9月19日 2時) (レス) id: 1b56a79d5d (このIDを非表示/違反報告)
ぬん - 最高過ぎます‼️ (2022年9月17日 21時) (レス) @page14 id: 02fb5e0a76 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:A.M | 作成日時:2022年8月31日 0時