94 許さないでね ページ23
鮫島side
「やっぱり、お前だったんだな」
ミドリという名前だと嘘をついたあの女。
ベッドの側にあるプレートには樋泉Aと書かれていた。
**
「もうよかったのか?」
「いーんだよ。俺関係ねーし。つーか、なんでお前こそ俺を見舞いなんかに呼んだんだよ」
久々に一郎に会って、睨まれて終わって、これで本当に最後だと思っていた。
そんな俺に連絡を寄越したのは、他でもないコイツだった。
「Aと知り合いだったんだな」
「ナンパした」
「はあ!?」
「失敗したけど」
「……まあ、あのAだしな……」
「あの女、普通じゃねーな」
「ある意味な」
図太い性格してるから、と一郎は苦笑いを浮かべた。
「……あんな奴が家族だったら、楽しかったかもな」
「お前、まさか」
「ちげえよ。好きとかなんじゃねえ」
好きなんかじゃ、ねえ。
「一郎、弟二人いるけど孤児で親居ねえだろ」
「……まあ、な」
そう答えた一郎が、少し意味深に聞こえたのはなぜだろう。
「俺さ、そもそも女嫌いなんだよな」
「はあ?」
「俺がなんであのクソ野郎んとこで働いてたかわかるか?」
「……わかんねーよ」
もう何年も思い出さないようにしては思い出して、苦しんでいる。
あの大嫌いな女の姿。
「ウチ母子家庭なんだよ。しかも……というか完全にそのせいなんだけど、母親がお金大好きなクズでよ。けど弟居るから」
ピクリ、と一郎の目が揺らぐ。
「弟と少しでも早く家を出ようして、アイツとこでバイトしてた」
何度も何度も、何もしていない人間を殴った。脅迫した。
一郎の弟にも散々なことしたな。
「だからなんだって感じだし、許されるわけじゃねーよ。許してほしいとも思わねぇ。誰にも、弟にも話すつもりなかったし。ただ、なんとなく言いたくなっただけ」
「鮫島、」
「じゃあな、一郎」
もう会うこともないだろうけど。
「本当に許しちゃいけねー人間を、間違えんじゃねえぞ」
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鮭ぇ - 最初読んでる時はこんな話だと思わなかったんだが、、。くっっそいい話じゃねえーか、、。完結おめです…ガチ泣きしました!いち。から読みますね!もっかい! (2020年12月13日 13時) (レス) id: b29402340d (このIDを非表示/違反報告)
かっちゃん(プロフ) - 無事、完結おめでとうございます。何気に初コメかも知れません!お話とても面白かったです…!死ネタは少し、地雷な部分もあったのですが、最後まで面白く見させてもらいました…お疲れ様でした! (2020年3月14日 15時) (レス) id: 17dcb00d4a (このIDを非表示/違反報告)
Mad Sick* - いち。から見てます!コメ2〜3回目?名前変えたりよくするのでアレですけど。 (2020年2月29日 4時) (レス) id: e54c8d8ca4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:紫 | 作成日時:2020年2月14日 21時