34空却「ところで何聴いてたんだ?」「ん? 十四くんところん曲ばってん。……ちょ、なんでヘッドフォン取ると!?」 ページ34
ちょいちょい、と私の服の袖を引っ張られて、ヘッドフォンを外した。
「折角隣に座ってんのになんでヘッドフォンすんだよ」
「ごめんごめん。ちょっと……空港着いてからソワソワしちゃって」
やっぱり、"こっち"に来ると落ち着かない。
「……飛行機で話してくれたこと、疑わねぇけど、本当なんだよな」
「……うん」
くうと私は今、私の育った父の実家、九州に居る。
飛行機から降りて、バスに揺られ待ち合わせ場所の駅へ向かっている。
……私を虐待していた父との、待ち合わせ場所へ。
**
一週間前の、夜のこと。
「くう、あのね、私と一緒に九州行ってくれん??」
**
飛行機にて
「なんで急に行くんだよ」
「……くうにね、言えとらんかったこと、話しとこうと思うて」
「!!」
私の言葉に、くうの瞳が動いた。
私は、ゆっくり深呼吸して、ついに、言った。
「私、父さんに虐待されとったと」
「……は?」
何を言っているのかわからないというように、くうは息を詰まらせた。
「付き合った日、小さい頃育ててくれた祖父母が九州弁やったって言うたと思うとばってん、私、祖父母亡くなった後父さんと池袋……今はイケブクロやね、そこ行って、生活し始めたん」
「……おう」
「そんでしばらくしてね、父さん殆ど仕事でたまに帰ってくると私んことくらしたり蹴ったり熱湯かけたり、……無理やり……そん、行為したりしたんや」
「……」
「引いたっさね。やけん私、綺麗やなかと。言えんくてごめん。ごめんね、く、……?」
「……くう??」
くうは、
泣いていた
35「(私の彼氏は、嫉妬深いけど、その分優しくて愛伝えてくれる。愛してくれる。そんなくうを、私も)」→←33「(勇気を出すから、どうか、受け止めて)」
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作者名：紫 | 作成日時：2019年10月2日 0時
