佰拾 ページ10
「これをこうして…」
「ふん…それで?」
赤い瞳を細めて無惨さんが私を見つめる。
「無惨さん、あの見すぎでは……?その、私は…」
「おや?A、私はネクタイの結び方が合っているのか見ていただけだが?」
無惨さんは私の腰を引く。
グイッと密着する体と、そして何故か手に絡まる無惨さんの白のネクタイ。
「おやおや。A、ネクタイはそういう風には使わない」
「次、次はちゃんと無惨さんの首元にネクタイを!」
「時間切れだ。今日も外に出てはダメだ」
シュルりと、私の手元から白いネクタイが消え、無惨さんは慣れた手つきでネクタイを結ぶ。
「行ってくる」
「行ってらっしゃい、無惨さん」
無惨さんに手を振るとフッと笑みを浮かべ、襖の中に入って行った無惨さん。
「あぁ!今日もダメだった……ネクタイって結ぶの難しいなぁ…」
仕事を始めようとする私に無惨さんは課題を出てきた。
【ネクタイを結べる事】
私はネクタイは使わないが、なぜか無惨さんはこのような課題を出してきたのだ。
無惨さんは私が働く事にやはり反対らしく、無惨さんのネクタイを結ぶ時、必ずと言っていいほど妨害をしてくる。
『Aの今日の髪は触り心地が良い』
とか、
『A、今日も美しいぞ』
とか。
「わぁぁ!!これじゃあいつまで経っても買いに行けないよ!!」
畳の上で足をばたつかせる。
「Aちゃーん!Aちゃん聞いてよ〜!」
明るい声が聞こえて、襖を開ければ、童磨さんが手を振っていた。
とりあえず飛び降りる。
「わっひょーい!!」
声を上げているが、怖がっているのではなく、楽しんでいるのである。
着地は鳴女さんがいつも手伝ってくれるから問題は無い。
ベンッ!
音が鳴り、目の前には童磨さん。
「こんにちは!童磨さん」
「こんにちは〜!Aちゃん」
虹色の瞳を細めて、扇子で口元を隠す童磨さん。
「Aちゃんって、元気だね〜!俺にも分けて欲しいくらいだよ!」
「じゃあ、分けてあげる!」
私は、はいっ!と言って、童磨さんの腕に触れた。
「はい、元気あげた!」
「ありがとう、大事に取っておくよ。……あぁ、そうだ、そうだ!」
童磨さんはニコリと笑って、小さな包みを取り出した。
「はい、これ。Aちゃんにプレゼント」
「えぇ!プレゼント!?」
両手でそっと包みを受け取った。
「開けていい?」
「もちろん」
和紙で包まれたものをそっと開けた。
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丸(プロフ) - へなさん» へな様…!今更だなんて!そんなそんな!素敵すぎるというお優しいお言葉…!拙い文にも関わらずそう言っていただけて本当に胸いっぱいです(*´-`*)長い物語でしたが、最後まで読んでいただきありがとうございました! (3月25日 1時) (レス) id: fe9b371b01 (このIDを非表示/違反報告)
へな - 今更ですが素敵すぎました! (3月24日 8時) (レス) @page50 id: 6adab414b4 (このIDを非表示/違反報告)
丸(プロフ) - ふわるさん» ふわる様、返信が遅くなってしまい申し訳ございません…!!そう言っていただけて光栄です〜!!(;▽;)そんなに褒めていただけてもう心中、喜びパラダイス状態です!!私も素敵な読者さまからコメントしていただけて幸せです〜!!ありがとうございます!! (8月26日 14時) (レス) id: fa76bf1609 (このIDを非表示/違反報告)
ふわる(プロフ) - 面白かったです!泣きました笑!なんでこんな良い作品が思いつくんですか!!!この作品に出会えてよかったです! (8月24日 1時) (レス) @page50 id: ca3f3ad930 (このIDを非表示/違反報告)
古猫丸(プロフ) - あやめさん» あやめ様!そんなに褒めてくださるなんて…!ありがとうございます〜!!m(_ _)m無惨様をさらに好きになるきっかけを作る事ができて感無量です。゚(゚´Д`゚)゚。あやめ様の褒め褒め言葉に私はHPが急激に回復いたしました!!素敵なコメントありがとうございました!! (2021年2月3日 19時) (レス) id: c92cfbb025 (このIDを非表示/違反報告)
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