鬼が好きな少女は。参

佰参拾肆 ページ34

「わぁ……ゴホッ…綺麗……」
「どう？Aちゃん、気に入ってくれた？」


私は何度も頷くと童磨さんは目を細める。
無限城は氷の世界になっていた。


「こっちは氷の蓮の花。綺麗だろう？あぁ、でも触っちゃダメだよAちゃん」
「童磨さん、凄い、こんな事も出来ちゃうんだ！」


幻想的な世界だ。
どれも繊細かつ美しい。


「…よいしょ」

ふらふらと立ち上がり、童磨さんの前に座る。



「ありがとう！童磨さん！」

童磨さんは一瞬ぽかんと私を見つめた後、嬉しそうに笑う。


「…それは良かった！あぁ、そうそうAちゃん、今日はどんな物語聞きたい？」
「うーん、そうだなぁ……ゴホッ…ゴホッ！ゴホッ」


咳が止まらなくなる、
胸を押さえて、何度も咳をする。


止めないと、心配させてしまう、そう持っていても止まらない。
最終的には床に倒れ込んでしまう。



「Aちゃん、今日はもう寝ようか」


血をタラタラと流す私を見て童磨さんはニコリと笑う。


「大丈夫さ、Aちゃん」


私を抱き上げて、布団に連れていく。



「Aちゃんは俺が極楽に導いてあげるからね」
「……貴様…何を言っている」



低い声が聞こえ、自分は目を閉じていた事に気づき、ハッと目を開ける。


「無惨さ…」
「喋るのは辛いだろう。そのままでいい。童磨、貴様は今すぐ消えろ」
「は〜い」



童磨さんが居なくなると、すぐに無惨さんは先程までの険しい顔が一変。眉を下げ、優しい表情に変わる。


「A、咳が少し治まると言われている薬だ。飲みなさい」


緑色の謎の液体が渡される。


「あ…う…」
「飲みなさい」
「……はい」


一口飲むとものすごく苦くて顔をしかめる。無惨さんはその様子を見て笑う。


「苦いか？」
「…とっても」
「ふふ、眉間にシワがある」




つんつんと眉間をつつかれる。


「A」
「…はい？」



無惨さんは湯呑みを取り上げ、少し離れた場所に置くと、私を優しく抱きしめた。


「A」
「…無惨さん？」

「どうか私を置いていかないでくれ」


「…！」


切ない声だった。
そして、堪らなく愛おしかった。


泣きそうになった。


でも病はどうしようもない。
分かっているけど、

受け入れられない。

私は受け入れられないのだ。
人はいつか死ぬ。わかっている。


死ぬのが早いか遅いか、ただそれだけ。
頭では分かっていても、実際病になって分かった。



受け入れられないのだ。

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