佰弐拾 ページ20
お団子を買った後、母と兄の元へ急いで向かう。
やっと家族と会えたのだから。
大切な本当の家族と。
母と兄は何も連絡なしで現れたにも関わらず私を優しく迎え入れてくれた。
饅頭を出して、私がどんな生活を送っていたか聞いてきた。
私は父親が鬼になった事な隠したが、他は何も隠さずに言った。
別にその生活に凄い不満を持っているわけではなかったし、何よりも父との大切な思い出のため、嘘をつく必要はないと思った。
母は泣いた。
私に謝ってきた。でも、お母さんが謝る事はない。
私は謝って欲しくて言った訳ではない。
私はただ母となんでもいいから喋りたかっただけ。
母が泣き止んで少しすると、外が暗くなってきていた。
私が帰ろうとすれば、母と兄は心配そうに、馬車で家まで送ろうか?とか、泊まっていかない?
とか沢山聞いてきて。
心配してくれる優しい温かさが心を埋めつくした。
「またすぐに会いに行くね。お母さん、兄さん」
私の心の支えの一つになる大切な人達。
***
無限城に帰れば、童磨さんも黒死牟さんも居なかった。
「どうしよう。お団子買ってきたんだけどなぁ……」
「A」
後ろを向く前に、後ろから抱きしめられ、顔を首元に寄せられる。
少し、黒髪が視界に映る。
「無惨さん」
「今日は少し帰りが遅かったな」
無惨さんは私の髪を軽く指に絡めている。
「はい、少し遊び過ぎてて時間を忘れてしまいました……」
「ほう……周りが見えなくなるほど何かに熱中していたということか」
少し声のトーンが低くなった無惨さん。
だけど機嫌が悪くなったのかは分からない。
ただ、この上なく魅力的である事には変わらない。
赤い瞳も、真っ黒な髪も、白い肌も。声も。
何もかもが魅力的。
「…A、A」
「っ!」
無惨さんは私を無惨さんの方に体を向けさせていて、バッチリ見られていた。
私は慌てて目をそらそうとしたが、顎を軽く掴まれ無惨さんだけが視界に映る。
「なぜ目をそらす」
「…つい、無惨さんに見惚れてて…ごめんなさい…」
恥ずかしくて小さな声で言う。
会話もちゃんと聞かないで見惚れてたなんて、残念な人だと思われただろうか。
「見惚れてたなど嘘をついても私の機嫌は良くならない」
「えっ?」
無惨さんはニコリと笑って私を抱き上げる。
「フッ、良くならない」
「無惨さん?」
「見惚れてたなどそんな嘘、私には通用しないぞ」
「え?」
無惨さんはその夜はとても上機嫌だった。
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丸(プロフ) - へなさん» へな様…!今更だなんて!そんなそんな!素敵すぎるというお優しいお言葉…!拙い文にも関わらずそう言っていただけて本当に胸いっぱいです(*´-`*)長い物語でしたが、最後まで読んでいただきありがとうございました! (3月25日 1時) (レス) id: fe9b371b01 (このIDを非表示/違反報告)
へな - 今更ですが素敵すぎました! (3月24日 8時) (レス) @page50 id: 6adab414b4 (このIDを非表示/違反報告)
丸(プロフ) - ふわるさん» ふわる様、返信が遅くなってしまい申し訳ございません…!!そう言っていただけて光栄です〜!!(;▽;)そんなに褒めていただけてもう心中、喜びパラダイス状態です!!私も素敵な読者さまからコメントしていただけて幸せです〜!!ありがとうございます!! (8月26日 14時) (レス) id: fa76bf1609 (このIDを非表示/違反報告)
ふわる(プロフ) - 面白かったです!泣きました笑!なんでこんな良い作品が思いつくんですか!!!この作品に出会えてよかったです! (8月24日 1時) (レス) @page50 id: ca3f3ad930 (このIDを非表示/違反報告)
古猫丸(プロフ) - あやめさん» あやめ様!そんなに褒めてくださるなんて…!ありがとうございます〜!!m(_ _)m無惨様をさらに好きになるきっかけを作る事ができて感無量です。゚(゚´Д`゚)゚。あやめ様の褒め褒め言葉に私はHPが急激に回復いたしました!!素敵なコメントありがとうございました!! (2021年2月3日 19時) (レス) id: c92cfbb025 (このIDを非表示/違反報告)
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