佰拾陸 ページ16
その日は久しぶりの外出で、たまたま鳴女さんが送ってくれた場所が、あの場所だった。
「あの時のお嬢さんですよね」
「あ…松山さん」
私は急いで頭を下げた。
「偶然ですね」
松山さんはニコリと微笑む。
改めてよく見ると歳は若く、21かそれぐらいに見える。
「…そうですね」
なぜか心臓の音が煩く鳴り響き、嫌な予感がした。
「お嬢さん、少し私の醤油屋に寄って行きませんか」
「お醤油屋…ですか？」
「えぇ…」
松山さんは優しくだけど少し悲しそうに微笑んだ。
「母はきっとお嬢さんの姿を見たら喜びます」
「そう言われましても…」
「もう母は先が長くありません。どうか、少しだけでも」
またズキリと胸が傷んだ。
私はゆっくり頷くと、松山さんの顔は明るくなった。
「良かった、良かった…やっと」
松山さんはホロホロと涙を流し、微笑んだ。
その笑顔がまた私の心を締め上げた。
＊＊＊
「母さん」
襖を開けた先には、縁側でボーッと庭を見つめていた一人の女性が居た。
彼女はゆっくりと振り返り、松山さんを見た後、後ろに座っていた私を見て、大きく目を見開いた。
「A！！」
女性は立ち上がり、私を抱きしめた。
よく分からない。なぜ、鬼のお父さんが付けてくれた名前を知っているのだろう。
「A、A……あぁ、本当に…」
女性はポロポロと涙を流し、私を抱きしめた。
松山さんを見ると松山さんも泣いていた。
「…あの人も、Aも突然居なくなって。本当に、もう…」
「あの人…？」
「私達の父の事ですよ」
松山さんは胸元から一枚の写真を見せた。
「え…？」
今度は私が目を見開いた。
「お父さん…」
目や、口元は少し違うが、お父さんだった。
そして、女性に抱かれている赤子が私なのだろうか。
「私は捨て子じゃなかったの……？」
「あの人、徹さんは生きているの！？」
女性は私を見た。
「……少し前に…亡くなりました」
「あぁ、そうなのね…そうよね……やっぱり亡くなったのね」
女性はゆっくり私から離れた。
「沢山聞きたい事があるけど…A、おかえりなさい」
女性＿＿＿お母さんは優しく微笑んだ。
「…た、ただいま…」
沢山の情報が勢いよく入って来て頭がいっぱいいっぱいになりそうだったが、なぜか、涙が止まらなかった。
私には家族が居た。兄もいた。母も。お父さんはお父さんだった。
それが本当に温かかった。
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丸(プロフ) - へなさん» へな様…！今更だなんて！そんなそんな！素敵すぎるというお優しいお言葉…！拙い文にも関わらずそう言っていただけて本当に胸いっぱいです(*´-`*)長い物語でしたが、最後まで読んでいただきありがとうございました！ (3月25日 1時) (
レス) id: fe9b371b01 (このIDを非表示/違反報告)
へな - 今更ですが素敵すぎました！ (3月24日 8時) (レス) @page50 id: 6adab414b4 (このIDを非表示/違反報告)
丸(プロフ) - ふわるさん» ふわる様、返信が遅くなってしまい申し訳ございません…！！そう言っていただけて光栄です〜！！(；▽；)そんなに褒めていただけてもう心中、喜びパラダイス状態です！！私も素敵な読者さまからコメントしていただけて幸せです〜！！ありがとうございます！！ (8月26日 14時) (レス) id: fa76bf1609 (このIDを非表示/違反報告)
ふわる(プロフ) - 面白かったです！泣きました笑！なんでこんな良い作品が思いつくんですか！！！この作品に出会えてよかったです！ (8月24日 1時) (レス) @page50 id: ca3f3ad930 (このIDを非表示/違反報告)
古猫丸(プロフ) - あやめさん» あやめ様！そんなに褒めてくださるなんて…！ありがとうございます〜！！m(_ _)m無惨様をさらに好きになるきっかけを作る事ができて感無量です｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡あやめ様の褒め褒め言葉に私はHPが急激に回復いたしました！！素敵なコメントありがとうございました！！ (2021年2月3日 19時) (レス) id: c92cfbb025 (このIDを非表示/違反報告)
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