鬼が好きな少女は。弐

伍拾玖 ページ9

「ただいまっ！鳴女さん！」

「お帰りなさいませ。A様。あの御方でしたら先程出かけられました。」

「そっか……。ありがとう！鳴女さん。」


私は本を持って自室に行く。

「金ちゃん、ギョッちゃん！ただいま！」

壺に向かって話しかける。
金ちゃん……金魚の名前である。無惨さんが取った金魚は金ちゃん、私が取った金魚は、ギョッちゃんと名付けた。二匹の名前を合わせると金魚っ！というわけだ。



「無惨さんが帰ってくるまで本読んどこっ……えっと……」

挟んでいた紙の所から読んでいく。


主人公の少女ロゼットは貧しい家に生まれたが、両親と幸せに暮らしていた。
ロゼットの幼馴染カーターはロゼットと共に行動していくうちにロゼットに惹かれていく。

二人はすくすくと成長していき15歳の春だった。

ロゼットが病気にかかり、外に出れなくなってしまった。
貧しい家が医者を呼べるはずもなく、ましてや薬も買うことすら出来ない。
原因不明の病によって熱にうなされ苦しむロゼット。

何とかして助けたいカーターは自分の両親の反対を押し切り、都市に働きに出た。
ロゼットの母親は娘の病、村の人の目でだんだん精神を病んでいく。
父親は必死に働くがそれでも医者を呼べるお金に届かない。



そんな時だった。


ある日、オリバー侯爵の遣いの者だと名乗る者が疲れきったロゼットの両親の元へ現れた。

侯爵は貴族の中でも上の方のランクに位置する貴族。
なぜそんな者の遣いが貧しいロゼットの所に？


遣いの者が言うには、ロゼットは町でも噂される美しい少女。オリバー侯爵はロゼットの治療費を全て支払う代わりに、彼女の病が完治したら直ぐにオリバー侯爵の屋敷の召使いとして差し出せという内容だった。

両親は、娘が助かるのなら仕方あるまいと遣いの者に伝えた。


オリバー侯爵の治療費のおかげで、病が治ったロゼット。
両親とロゼットが抱き合い喜び幸せだったが、直ぐにその時間は壊された。

あっという間に病が治った事がバレ、遣いの者がロゼットを迎えに来た。


何も知らされていなかったロゼットは泣きながら無理矢理遣いの者に馬車に詰め込まれた。
カーターとも別れを言えずに。


馬車の中でロゼットは遣いの者に全て説明された。
オリバー侯爵のおかげで自分は助かったのだと。
その恩返しの為に自分はオリバー侯爵の召使いとして働くという事。


最初は泣いていたロゼットは、悲しかったが泣くのを止め、覚悟を決めた。

……


…そして…

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