松野さん家は、どこかおかしい。

05 ページ6

『…………。』





「…………。」








ゆっくりと私は後退りし、
とりあえず、扉を閉めておく。








…誰だ今の。




いや、それどころじゃない。







不審者だ。
警察に電話しないと。







「ねぇ、何で閉めるのかなぁ。」


すぐさま鍵を掛けようとした途端、


ガチャ、と扉が開き、
再び男が顔を出してきた。





『…ひ、ッ』


「……んふふ、怯えちゃって。
かーわいい。」




凍りつくような笑顔。





蛇に睨まれたとはまさにこの事で、
気の緩んだ油断の隙に、


易々と玄関ドアは突破された。






身体中から、嫌な汗が溢れ出る。






嘘、


平然と家に入ってきたんだが。









『ど、どなたか存じませんが、帰って下さい…ッ。
警察呼びますよ…。』



「…そんな事言わないでよー…。
お迎えに来たのにぃ…。」








"お迎え"？



何言ってんだこの人。


『っ、は』




口をぽっかり開けていると、
男は不思議そうな顔をする。





「あれ、ひょっとして俺の事覚えてない？









……まぁ、15年前だし、


無理ないか。」




俯きながら、ぶつぶつ呟く。







何がなんだか、
ちっとも分からない。









「……えーっと、



改めて、




君のお兄ちゃんになる、

"従兄"の松野おそ松です。


よろしくね、Aちゃん。」









__________耳を疑った。

06→←04

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す