【A3!】大好きなお兄ちゃんへ【三好一成】

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(ここに、お兄ちゃんがいる…。)

　劇場の上に「MANKAI」と掲げられている文字を見ていた。あまり大きくはない劇場だけど、それなりの歴史を感じる。
　私はそっと劇場の入り口に手を添える。

「あれ？もしかしてお客さん？」
『ふぇっ！？』

　突然、背後から声が聞こえた。
　慌てて後ろを振り返ると、そこには少し赤みが入った茶色のロングの髪に、綺麗な瞳をした買い物帰りのお姉さんが立っていた。

(わぁ...綺麗な人...！)

「あ！驚かせてごめんね！私は立花いづみです。ここの劇団の監督をやっているの。今は公演のほうはやってないんだけど、今度夏組の旗揚げ公演があるから、よかったらぜひ見に来てください。」

　劇団の監督さん…？もしかして、お兄ちゃんが言ってた監督さんってこの人のことかな？
　その監督さんはにこっと微笑み、夏組公演の宣伝をしてきた。

『あ、あの…、いきなりお尋ねして申し訳ないのですが、この劇団に三好一成という人はいますでしょうか…？』
「一成くんのことかな？その子なら今、夏組に所属しているけど、もしかして妹さんかな？」
『は、はいっ！え、えっと…私、妹の三好Aって言います。』

　監督さんにも私のことが知られていた。きっとお兄ちゃんが話していたのだろう。

「やっぱり！一成くんからはたくさん話は聞いてるよ。すごく似てたらからもしかしたらって思ったけど、本当に妹さんなんだね！今日はどうしてここに？」
『その…道に迷ってしまって…あてもなく歩いていたらここに辿りつきました…。』

　高校生にもなって迷子なんてすごく恥ずかしい。いつもお兄ちゃんと一緒に行動していたから、道に慣れていなかったのかもしれない。
　けど、監督さんは顔色一つ変えず、私を見て「あはは…。迷子になると大変だよね。」といい、共感してくれた。なんていい人なんだこの人は。

「Aちゃん。もしよければうちの寮に寄っていかない？きっと一成くんも喜ぶから。」
『え？寮ってここじゃないんですか？』
「ここはあくまで劇場なの。劇団員はみんな「MANKAI寮」っていう別なところに住んでいるんだよ。」

　劇場と寮を間違えるなんて…。私は少し恥ずかしくなり、顔を俯ける。

「そ、そんなに落ち込まなくても大丈夫だから！ほら、いこう？」

　監督さんは私の手を取り、寮へと案内してくれた。
　久しぶりにお兄ちゃんに会えるけど、私なんかがあって本当にいいのだろうか…


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