おかえり。 (ページ42)

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家に帰るのも嫌で

そこら辺の公園に居座るのも嫌で

どこかの店に入るのも嫌な俺は

彼の家の前に立っていた

お昼から今の今まで何してたかと言うと

歴代の遊んだ人達が聴いていた曲を聴きながら

ぶらぶらと散歩していた

何ともまぁ嫌な行為。

彼から貰った合鍵を手に取り

鍵をさして回すと、直ぐにオートロックが解除された

エレベーターに乗り込み彼が居る部屋の階まで

何も思わずに無心のまま立ち尽くす俺

「 … 阿部さんが … 」

あの時の彼女の本気な顔

子供は嘘なんかつかない、ましてやあんな小さい子

素直で嘘という存在を知らない

そんな子だ。

ならば本当に阿部さんは俺の事を恋愛感情として好きなのか

いや、五年前に奥さんを亡くしていて

えっちゃんがいる、それは無いと思う。

子供が持っている感情なんて単純なもので

簡単に言葉で表せるものばかり

恋愛、なんてものはない

そう俺は思っている。

階に着き、端にある彼の部屋に向かえば

再度鍵をかけて、ドアノブを回した

俯きながら開けた俺だから

直ぐに見覚えの無い靴があるのが分かった

彼の靴よりも大きい靴

革靴、か

奥では笑い声や

「ひかる」

と知らない男の名前を呼ぶ彼の声

卑猥な声じゃなくて

普通に楽しそうな声で呼んでいるから、そういう行為は

してないだろうけど

少し嫌な予感はしている。

「たつや」

俺は靴を脱いで、ズカズカと廊下を歩きリビングにつづく

扉を開き、彼の名前を呼んだ

テーブルの上には沢山の酒の缶と

煙草のカス

そして、足元には顔を真っ赤にさせながら、あぐらをかいて

片手に酒を持つ彼と

奥に裏関係に居そうな強面の男

「え、翔太！」

「 ……… 」

奥の男は俺を凝視しながら無言のままだが

彼は俺だと認識した瞬間に足元に腕を絡ませてきた

酒臭い

「急に来てごめん、会いたくなって」

「いーんだよんなの、あ！！紹介するよ

高校の同級生のいわもとひかるちゃん！」

「ひかるちゃん？」

「 “ くん “ な、岩本照です、どうも」

酔いがかなり回っているのか

彼はベロベロになりながら男の紹介をした

岩本照、か。

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