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「 もーおまえらー泊まってけよー 」
「 酒くせぇやつの家になんか泊まんねぇよ 」
「 しょーたくんそんな毒舌いやだ!
ね、ひかるはいてよ 」
「 悪いけど俺もパス、じゃ 」
酔い潰れた彼
玄関先で袖を引っ張りながら舌足らずな口で誘ってくるが
ここは堪えて、俺はそのまま彼の家を後にした
エレベーターの中では岩本との無言の空間に耐えきれず
つい何度もポケットに携帯を入れては
もう一度手に持ち
というのを繰り返してしまう
高校の同級生
彼の口からは聞いたことがなかった
「 翔太、さんでしたっけ 」
「 え、あ、はい 」
帰り道
偶然にも岩本と同じ方向らしく
トボトボと歩いてる中声をかけてきた
男らしい低い声
俺とは違う
「 あの時は睨みつけるような感じで見ちゃって
すいません、人見知りで 」
「 あ、あぁいやいや全然ですよ 」
“ ハハッ “ と笑いながら髪の毛をかいて
呟く岩本
案外良い人というか
内気な人なんだなと俺は思う
だけど人って分からない
急激に変化したりなんてこともある訳で
正直まだ警戒心はある
「 ふっかとはどういうご関係で? 」
「 あ、あーたつ … ふっかとはただの友達です 」
「 たつや呼びなんですね 」
「 … まぁ 、」
「 別に隠さなくていいです
呼び “ 名 “ とかって、人前ではあまり出しずらいですもんね 」
小説や漫画ならば
「 あーそうなんですね 」
くらいの反応で次の会話や章へと続くのに
岩本はそんなの通用しないと言わんばかりに
突っかかってくる
下を向いていた顔を上げて
岩本をそっと見てみると
俺の方を横目で舐め回すように見ていた
何かを探るように
獲物 かのように見てくる
そんな岩本の香りはハーブ
確かどこかで見た気がする
ハーブの匂いは野生動物にとって
:
“ 猛毒 “
:
なんだとかで。
「 たつやって呼び方するのって
それ相応のご関係が? 」
「 … 知ってどうするんですか? 」
:
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作者名:渚 | 作成日時:2022年4月29日 21時