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「 俺もう寝るから、切る 」
この空気感にどうしても耐えられなくて
何かを言い出そうとしていた向井を見捨て
電話を切った。
電源も切れば、携帯をベッドに投げて
俺自身も身を倒す
:
「 はぁ … 」
「 んもう、さっきからなんなん？ふっかさんずーっと
はぁ … はぁ … って、発 情期なんか 」
「 俺は動物かなんかと間違われてる？
恋人からメールの返信が来ないの、ずーっと 」
彼からの連絡は毎日一通限り
それも
「うん」「そうなんだ」
だけ。
男と付き合うなんて彼が初めてだし
彼で終わりにしたいけど
男ってこういうものだったっけ。
友達としてでしか男という存在と付き合ってこなかったから
恋愛になればよく分からなくなってしまっている
これが普通？俺がおかしい？
なんて自分に問いかけるけど、正解なんて見つからない
もしかして、飽きられた、とか。
「 何かしたんか 」
「 何も、むしろそれすらも出来ない程心が離れてる 」
「 んなのメールをアテにしないで、直接会って
話したらええやん、好きなんやろ？ 」
「 当たり前じゃん！愛してる！ 」
「 俺に言わんの … なら今早退し .. 「 部長！頭が悪いので早退します！ 」
「 … そうやなくてさあ！！ 」
いてもたっても居られなくなった俺は
スーツジャケットと鞄を片手に会社を飛び出す
今の時間、彼は仕事ではないが
一度だけ教えてもらった彼の家へと足を急がせる
曖昧だけど、確か少し古びたアパートだった
“ ここで好きな奴と住むのが夢 “
って、彼らしくない事をメールで見た時には
何故かドキッとした
中までは見てないけど、俺も彼とそこで住みたい
汗が額や脇から出る中、俺はまだ走る
「 … はい゛… って、え 」
「 ふぁ … はぁ … ひさし、ぶり … 」
いつにも増して長い髪の毛が目立つ寝癖
まだ完全には開かれてない目を擦りながら
俺の姿に驚いている彼は愛々しい。
「 ずっとメールが少なくて、友達に相談したら
直接会ってこいって言われたから … ぷはぁ …
やべー！30歳の体力にはあの距離キチィー！
あ、急に押しかけてごめんな！ 」
一人で勝手に話し始めて
一人で勝手に進ませて
一人で勝手に謝る
これが俺の癖。
「 ばか 」
やっぱり、好きだ。
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作者名：渚 | 作成日時：2022年4月29日 21時
