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この家に引っ越してきて
初めて人を家に上げた
家族だった人達とは、俺が高校を卒業すると同時に消えたから
上げる人もいなければ、引っ越しを報告する人もいない
正確に言えば、卒業式が終わった後に家に帰ると
俺の部屋にある家具以外の物全てが消えていた
ここ最近、何か物が減ってるなと思った矢先の事。
「 ワンルームなんだ 」
壁に寄りかかって見詰めている俺を放っといて
目の前にいる彼は俺の部屋を舐めるように見回す
まだ休み時間じゃないはずなのに
本当にバカだ
バカすぎて
「 あれ、何顔赤くしてんの? 」
返したくないじゃないか。
「 お前から出てる蒸気で赤くなってるのかもな 」
「 え!?俺、蒸気出てる!? 」
わざとらしくニヤっと口角を上げながら冗談を呟く
もちろん蒸気なんか出ていない
俺は一人慌てている彼に近づき
首を絞めない様ネクタイを引っ張れば
キスをしながらベットに押し倒す
最初は俺の胸を叩いて退かそうとした彼だが
何度叩いても退かない俺に諦めたのか
両手を俺の耳に添えて彼からも交わしてくる
あの時、あの映画館の時の様に
キスの音しか聞こえなくなる様に耳を閉じられ
そっと目を開くと彼と目が合う
頭の中は真っ白
ただ彼の瞳に映る俺自身を見る事しか
今の頭では追い付かなかった
「 案外、翔太も攻めるんだ 」
「 遊んでる時ずっと攻めだったからね 」
「 あー聞きたくない 」
シてはいないが
二人向かい合ってシングルベットの上で横になりながら
ピロトークの様な会話をする
まだ体は熱いまま
彼の手もほんのり熱が感じられて
またその気になってしまう
ベッドから起き上がり、まだ横になっている彼を見れば
ベランダの外を覗いていた
俺自身、洗濯物は浴室の乾燥機で乾かすから
ベランダに出ることは少なくて、ベッドで扉を塞いでいた
「 吸うなら良いよ 」
察した俺は鍵を開けて扉を開ける
彼はニヤッと笑ってポケットに入っていた煙草を取り出せば
「 流石俺の彼女 」
なんて言ってベランダに出る
煙草、変えてくれないかな。
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作者名:渚 | 作成日時:2022年4月29日 21時