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「 なぁ、最近帰り遅くね 」
「 え、あぁ … 課題が多くって、な!
もうあの教授いっつ .. 「 ねぇだろ、そんなの 」
あの電話があった日から
向井の帰りは
10分、30分、一時間、三時間、五時間
約束の時間に来ない、や、帰って来ない日
が、増えていった
必ず18時には俺の家に居て
ご飯を作って待っててくれたり
お風呂に入ってたり
ゲームして俺を待っててくれたりなんかが日常だったのに
下手に本人に聞けば必ず適当な理由をつけて
目を逸らす
こんなに一緒にいるんだ、それくらい分かってる
だから俺は向井が通うゼミに向かい、そのゼミの人間に
「 ここのゼミって課題多い系? 」
なんて聞いてみた。
:
“ 課題なんて滅多に出ないよ “
:
「 ゼミの人間に聞いたんだよ課題があんのかどうかって
お前なんで嘘ついて逃げようとしてんの 」
また、右を向く
人は何かしら嘘をついていると必ずと言って良い程
視線や仕草、動作は全て
右を向いたり右手の指が動いたりなんかするという
本当の事なら真っ直ぐ目を見ると言われているが
向井はそうしない。
何も答えないで口を尖らしたまま右を向く向井
俺はそんな向井の姿に腹立たしく思えば
右手を上げた
:
「 康二、俺ずっと気になってたんだけどさ 」
「 んー?ふっかさんが珍しいやん、俺についてって 」
「 んやさぁ、康二の左耳って」
いつも赤いよね
「 あー … 色々あったんよ、昔 」
「 お前やんちゃしてたの? 」
「 んなわけないやん、ただの喧嘩や喧嘩 」
「 んで左耳殴られたと 」
「 殴られたって言うか … そやな … 叩かれたってのが
正解やな 」
ストローをさしてレモンジュースを飲みながら
笑う向井
9年前から左耳の聴力が凄く低くて
基本話す時は右耳から聞こえるように顔を傾ける
大変そうだけど
どうして落ちたの?なんて聞いた時には必ず
「 俺が悪いねん 」
とだけ言ってその場を離れる事が多数
そんな向井はいつもとは打って変わって
真っ直ぐ目を見詰めていた
寂しそうなその瞳
きっとまだ、誰かが写ってるんだろうな
と俺は思う
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作者名:渚 | 作成日時:2022年4月29日 21時