12 ページ12
:
「 ポップコーン買う？ 」
映画館の中に入った俺達は二人で何を買うか選ぶ
だけど二人ともお腹は空いておらずに
飲み物だけ買ってシアターの中に入っていった
「 これ、さっきのタクシー代 」
財布からお金を出すと
深澤は
「 閉まっといて、人にお金は出させたくないんだ 」
と俺の手を握ってお金を戻させる
さっきまで暖かかった手の温もりは
飲み物の冷たさで冷えていた
席は一番後ろの一番左側の二席
偶然にもここの席が二人とも好きな模様
恋愛映画だからか入ってくる人は皆カップルばかりで
男二人だけというのは俺達だけだった
でもそれでもいい
周りの席には誰も座ってないし
遮るものもない
二人だけの空間が少しでもあれば
満足だ。
「 楽しみだね 」
深澤は俺の目を見てそう言った
「 楽しみ、だね 」
こんなの、もう慣れてるはずなのに
胸がドクン__ と鳴っている
聞こえてないか心配になるくらいドクンドクンと
集中できると思っていた映画も
この調子じゃ無理だと確信した
( 嫌、何であんな女の所に行くの！ )
( 離せよ！！お前にはもう関係ないだろ！ )
男と女って、何故こんなにも喧嘩ばかりするのか
話し合って和解すればいいものの
感情的になるだけで何も変わりやしない
喧嘩なんか誰ともしたことはないけど
感情的には絶対ならない、絶対。
「 … うぉ ……… 」
修羅場シーンが長過ぎて少し飽きてきた頃
シアターの中を見回していた時
あるカップルに目が行った
何度も何度も角度を変えながらキスをして
一度口を離し微笑めば、またキスをする
恋愛映画って、こういうのが付き物なのだろうか
映画ではなく、そのカップルの行為をじっと見ていると
「 したい？ 」
と、俺の顔を覗いて聞いてくる深澤
ずっと見てたら確かに気になるよな
「 いや … っ、別に 」
したい
したいさ
好きな人の全てを知りたいんだ
キスくらい、初歩的なものでは無いと。
「 … そう 」
椅子に背中をボスっと音と共に預け
また映画に視線を移す深澤
そんな横顔見せられたら、我慢なんか無理だよ。
俺は勢いをつけ、深澤の膝に座り深くキスをする
甘くて
蕩けて
夢中になれるくらい
:
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 198人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：渚 | 作成日時：2022年4月29日 21時
