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「 お邪魔します 」
「 そんなかしこまらないでよ、これスリッパね 」
セキュリティバッチリ
二階以上のマンション
角部屋
まるで女の子の理想物件そのもの
玄関から漂う良い匂いは廊下まで通っていて
リビングへと続くドアを開ければ
また違った匂いが漂う
「 ソファに座ってて、今ご飯持ってくるから 」
部屋着の彼を横目にジャケットを脱いで
畳みながら座れば太ももの上に置く
ホコリも無ければ食べカスも落ちてない
生臭い匂いもないし、全て整理整頓されている
なんと言うか、凄い。
俺も散らかったものは片すし掃除だってするけど
ここまで細かい所までは出来ない
というか途中で断念。
キッチンにいる彼を見てみると
少し口角を上げて
手作りであろうご飯をお皿に並べている
俺はジャケットをソファの上に置いて立ち上がれば
そっと彼の後ろへと迫り、腰に腕を巻き付けた
「 なあに 」
「 んーん、なんでもない 」
首元に顔を埋めて
彼の手元を見ながら言えば、彼はこっちを向いて
口を尖らせる
俺は尖らせた口を見て、触れるだけのキスを一瞬交わせば
“ フフッ “ と笑って、額を彼の肩に当ててグリグリと擦る
本物のカップルみたい
いや、本物さ。
「 ね、ど?これ手作り 」
「 んもうね、めちゃくちゃうまい、まじうまい 」
ソファの前にある机に皿に並べたご飯を置き
二人一緒に食べ始める
彼の手作りのご飯は美味しくて美味しくて
ほっぺが蕩けて落ちそう
なんて、この事なんだと思う
箸は止まらずに、どんどん口の中へと運ばれていき
俺の口の中は大渋滞
そんな俺を見て笑う彼
少し分かれている前髪に人差し指を通して、歯を出して笑う彼を見て、俺も微笑んだ
それから二人で食べ進んでいけば、あっという間に食べ終わって
二人とも満腹
「 食ったね 」
「 めちゃくちゃね、皿洗うよ 」
「 客に洗わせる訳にはいかねぇじゃん 」
「 良いから、洗う 」
皿を持ってキッチンへと行くと
後ろから彼が歩いてきて “ 悪いなぁ “ と言いながら
俺の腰に腕を巻き付けた
ぎゅっと彼自身の方に引き寄せられて
鼻が首筋にあたり、くすぐったい
「 タオルどこ? 」
「 んー、ここ 」
手拭きタオルを俺の目の前に差し出した彼は
また俺をギュッと抱き締める
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作者名:渚 | 作成日時:2022年4月29日 21時