【d!】お願い、僕を見て【ci】

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仲の良い友達は、目を腫らして登校してきた私を心配してくれたし、何も聞かずにいてくれた。今は途中まで彼女たちと帰って、分かれ道からは１人だ。

私とチーノは一緒に帰らなくなっただけで、以前よりかなり回数は減ったものの、他の人も交えて遊んだり、たまにメッセージのやり取りをしたりしていた。教科書を忘れたチーノが私に借りに来ることもある。友人は威嚇したりすごく嫌そうな顔をするけど、私は少しでもチーノとの繋がりを切りたくはなかった。
さすがに彼女さんに悪いし、私としてもあの2人が一緒にいるのを見たくないので彼らの教室に足を運ぶことはないけど。

２学期も終わりに近づいてきた頃。その日も友人たちと帰ろうと、教室の後ろのドアに向かった。担任にしては珍しく、いつもより少しSHRが長かったせいか、廊下はざわざわとしていた。

教室を出る最初の1人が音を立ててドアを開けた後、ひょっこりと顔を覗かせてきた長身の男がいた。

チーノだ。

「A、帰ろー」
「え、なん、彼女さんは？」

昨日別れた！とあっさりと答えた彼は茫然とする私から鞄を奪い取って昇降口に足を向ける。
動揺して、後ろにいる友人たちを振り返ると、彼にまだ片想いしている私を知っている彼女たちはそっと背中を押してくれた。

久しぶりに２人で歩く帰路は逆に新鮮な感じがした。夕焼けに染まったオレンジ色の道路に身長差のある私たちの影が長く伸びている。半歩詰めた分の私たちの間は元通りの距離に戻っていた。
まるで昨日もその前も、ずっと一緒に下校していたかのような雰囲気のチーノは以前と変わらない他愛のない話をしてきた。

「あのさー」
「なに？」

夏休み明けから隣に立っていなかったから気づかなかったけれど、また背が伸びたようだ。見上げた彼の顔は前よりも高い位置にあって、その表情は逆光でよく見えなかった。

「Aってまだ俺の事好き？」
「……好きだよ」
「そっか」

ありがとうな、という声は今まで聞いた中で一番柔らかなものだった。
ずるいと思う。この男はずっとずっと、私の気持ちを誰よりもよく知っているというのに。

「まあ結局、彼女作ってみても恋愛ってよおわからんかったわ」
「また保留？わかったら返事くれるの？」
「そうしといてや」

そう言ってへらへら笑いながら私の頭をポンと撫でるこの男は本当にずるいし、どうしようもなく惹かれてしまう。不思議なほどに魅力的だった。

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