好き〜３４〜 ページ34
「何でそんな嬉しそうなの？」
櫻井先輩に腕を引かれて戻ってきた私に、潤くんが引き気味な様子で言った。
『だって、だってね！櫻井先輩の素が見れたんだよ！？』
「素って･･･あの口悪い先輩を？」
『うん。目も冷たくてね･･･すごい嬉しかった！』
「ドＭ？」
失礼な。
好きな人の素を見て喜ぶのは普通でしょ。
････まぁ確かに、傷付かなかったと言えば嘘になるけど･･･。
『あ、そういえばこの次って借り物競争だよね？』
「あー･･･そういやそうか」
『潤くん、頑張ってね！応援してる！』
「ありがと。借り物競争には上田いないし、借り物が変な物じゃなきゃいけると思う」
『まさかぁ』
仮に変な物だったとしても、潤くんなら何とかなると思うけどなぁ。
･･･なんて言ったら流石に「適当言うな」って怒られるかな。
.
.
「ただいまより、借り物競争を開始します」
アナウンスの声の後に、銃声が響く。
走者は一斉に前へ飛び出した。
あ、潤くんと櫻井先輩が一番早い！
「ここで、松本くんと櫻井くんが紙を取りました！」
紙を開いた瞬間。
潤くんは少し眉を顰め、櫻井先輩は深いため息を吐いた･･･ように見えた。
一体どうしたんだろう････？
『････え？』
え？待って？何で？
なんか････幻覚かな？櫻井先輩がこっちに走ってきてるように見えるんだけど？
「Aちゃん！」
『はひっ！？』
幻覚じゃなかった！！
な、何で私のところに！？完全に明里さんかと思って油断してたよ！？
わたわたしている私をよそに、櫻井先輩は真っ直ぐに私の目を見つめながら手を握った。
「ごめん、急に。けどお題がお題で･･･とりあえず、一緒に来てくれないかな？」
『も、もちろん･･･です････』
熱くなる顔を押さえて櫻井先輩と一緒に走る。
そして視界の先には＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
明里さんの手を引っ張りながら走っている潤くんの姿が。
･････明里さん？な、何で！？
「え･･･A？」
『じゅ、潤くん！何で明里さんを、』
「松下、喋ってないで走れ！」
『はっ、はい！！』
「あっ！やべっ、まずい･･･！スピード上げますよ！」
「ま、待って松本くん！」
二人とも一気に加速し、ギリギリの勝負を繰り広げていた。
そして見えたのはゴールのテープ。
私は最後の力を振り絞ってゴールに飛び込んだ。
「！！今、両者ともゴールしました！一位は＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿！」
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作者名：みかづち
| 作成日時：2020年9月2日 15時
