好きです、先輩。【ＳＳ】 (ページ31)

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好き～３１～ページ31

「はい、松下さん！」
『っ、任せて！』

バトンをしっかり受け取り、全力で走る。

後ろから伊野尾くんの声も聞こえた。
正直確認する暇なんてない。ただ走るしかない。

だから私はバトンを落とさないようにと手を強く握った。

その時。

「頑張れA！！」
『！！』
「えっ、今のって･･･」
「あの二人って同じチームじゃないよね･･･？」

聞こえた声に一瞬視線を向ける。

あれは＿＿＿＿＿＿＿＿。

『潤、くん････』

もしかしてあの時私が応援したから、そのお返し？

････だとしたら、律儀すぎるよ。

『(でも、ありがとう)』

潤くんのおかげで力も出てきたし、一位キープのまま櫻井先輩に渡そう。

「豚足ちゃんはやーい」
『ばっ、馬鹿にしてる、っでしょ！？』
「まさかー」

早いなんて言うけど、伊野尾くんのほうこそどんどん早くなってる。

しかも余裕そう。
やばい、このままじゃ追いつかれる･･･！

「＿＿＿＿＿＿＿＿お、早くなった」

ぷ、プレッシャーが半端ない！

でも櫻井先輩の前で抜かれるわけにはいかない･･･！！

「松下、長距離が得意って本当だったんだ？これはやっちゃったなぁ」

ゴール手前、少し後ろでそんな言葉が聞こえた。

『っ･･･櫻井先輩！』
「よし、そのまま！」

櫻井先輩にバトンが渡った＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿その瞬間。

一気に地面が目の前に広がった。

そして次に来たのは痛みと衝撃。

･･･どうやら私はこけてしまったらしい。
膝がズキズキと痛む。

地面にはほんの少し血がついた。

「！！松下！」
『っご、ごめんなさい先輩･･･！』
「･････そんな顔すんな」

先輩はバトンをもう一度しっかりと握って、先輩を抜かした山田くんの背中を見据える。

その目は、いつになく真剣で。

「言ったろ？何があっても俺が繋ぐ、って」

櫻井先輩以外の声がシャットアウトされる。

「だから笑顔で待ってろ」

.

.

それは、一瞬だった。

先輩はいつの間にか山田くんに追いつき、抜くかどうかのせめぎ合いをしていた。

･････顔が、熱い。

「A！」

顔を覆っていると、潤くんが心配そうに駆け寄ってきた。

「大丈夫か！？怪我は？」
『あ、ちょっと痛いだけだよ』
「血出てんじゃん･･･！今すぐ保健室に、」
『ごめん、櫻井先輩の番が終わるまで待って？』

“笑顔で待ってろ”

笑顔で「お疲れ様」って言いたいから。