好きです、先輩。【ＳＳ】 (ページ23)

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好き～２３～ページ23

「描いた人が不機嫌だったら雑な作品ができるし、逆にすごく幸せな気持ちで描いたら明るい作品ができあがる。絵は、その人の感情や本音が現れる、そんな、単純だけど複雑なものなんだよ」

大野先生がどんな気持ちで描いてたのか、なんて初めて知った。

そもそも、絵そのものが“その人の感情”だなんて考えたこともなかった。

『大野先生、凄いですね･･･』
「ん？そう？」
『今まで体たらく教師だと思ってたの申し訳ないです』
「え～？そんなこと思ってたの？」

大野先生は「ひでぇ」とケラケラ笑った。
それにつられて私も笑う。

静かな美術室に、二つの笑い声が重なって響いた。

「＿＿＿＿＿＿＿＿＿それで？」
『え？』

大野先生が再び目の前のキャンバスに向き直り、作業を再開させた。

「俺に何か相談したいことがあるんでしょ？」

････どうしてそれを。

目を丸くしている私を見て、大野先先生はまた笑った。

「俺はよく「何考えてるか分からない」とか、「無感情なんじゃないか」なんて言われる。それはAちゃんもよく知ってるでしょ？」
『は、はい･･･』
「それは俺も自覚してるし、だから自分の思いを伝えるなら言葉や態度じゃなく、絵で示すしかない････それしか、方法を知らないから」

続けて「それにそのほうが楽だしね」と茶化すように肩をすくめる。

「だけどAちゃんは全部、顔や態度に出るんだよねぇ」
『えっ！？そ、そうなんですか！？』
「あれ、言われたことない？」
『･････そういえば、横山先輩にも「顔に出やすい」って言われたような････』
「んふ、そうでしょ？」

まさか大野先生にまで言われるとは････。

櫻井先輩にこの気持ちがバレたら大変だし、隠さなきゃいけないのにな。

潤くんにポーカーフェイスのやり方教えてもらおう。

「いかにも「悩んでるんです」って顔で見てきたら分かるよ。で？相談事って何？もしかして翔くんのこと？」
『････それも顔に出てますか？』
「いーや？単純に、Aちゃんが悩むって翔くんのことくらいしかないじゃん」
『それはっ！････否定できませんけど』
「分かりやすー。･･･それで、翔くんがどうかした？」
『･････実は、』

私は今朝のことを話した。

大野先生は関係ないけど、でも、この人に話したら解決できるんじゃないかって
不思議とそう思えた。

やっぱり、潤くんと櫻井先輩にはいつもみたいに仲良くしてほしいから････。