好き〜２１〜 ページ21
『あ、おはようございます！』
校門で櫻井先輩を見かけ、声をかける。
先輩は一瞬気まずそうな顔をしたけど、すぐにいつもの優しい笑みを浮かべた。
･･･？潤くんを見てる？
「･･･おはようございます」
潤くんも潤くんで暗い表情をしている。
一体どうしたんだろうか。
『あ･･･あの、明里さんは？』
重い空気をなんとか変えようと話を持ち出す。
「後から来るよ。どうして？」
『いつも一緒にいるので･･･』
「ああ、なるほど。よく分からないけど、なんか具合が悪いらしくて」
「俺が関係してるなんて言わないですよね？」
『え？』
潤くんがめんどくさそうな顔をしながら櫻井先輩の顔を窺う。
櫻井先輩は「まさか」と笑った。
「明里は“あんなことくらいで”傷ついたりしないから大丈夫」
「･････そうですか」
･･････よく分からないけど、二人の間に流れる空気がマズイことだけは分かる。
だって、普段穏やかな顔してる櫻井先輩の眉間にシワが寄ってるんだもん。
『っ、ごめんなさい先輩！遅れそうなので失礼します！』
「うわっ」
空気に耐えられなくなった私は、潤くんの腕を引っ張って教室へと向かった。
櫻井先輩が顔をしかめていたけど、もしかして良くないことしちゃったのかも･･･？
でも、あのまま放っておくよりはいいよね･･･？
『もう！潤くん、昨日何があったの！？』
「何って･･･特には」
『絶対あったでしょ！あの櫻井先輩があんな怖い顔してるって相当だよ！？』
「･････」
潤くんは目線を泳がせ、口を噤んだ。
どうやらあまり言いたくないようだけど･･･でも気になる。
『明里さんが関係してるの？』
「･･･内緒」
『いや、内緒って････』
「大丈夫、Aに迷惑はかけないから」
『でも･･･』
普段仲良さそうにしていた二人がギクシャクしてるなんて、やっぱり嫌だ。
でも潤くんは「こうだ！」と決めたことは曲げない性格だし、
きっとこれ以上は教えてくれないんだろう。
私は問い詰めるのを止め、ただ「そっか」と小さく頷いた。
そうすると潤くんの表情が少し明るくなり、いつの間にか体育祭の話になっていた。
････あの様子じゃ、櫻井先輩も無理そうだし･･･明里さんに聞こうかな？
でもそれじゃ潤くんに知られた時に怒られる気がするし･･･。
「A、聞いてんの？」
『う、うん･･･』
気になって話が入ってこない･･･！！
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作者名：みかづち
| 作成日時：2020年9月2日 15時
