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ひとり ページ19
コツコツ…コツコツ
一つの足音が薄暗く長い廊下に響き渡る
その足音を聞くと苦しくなるのはひとりだからだろうか
いつから。いつから私はこんなにも弱くなった？
一人で生きていくのさえ寂しくなるほど弱くなった？
羊に入る前、中也と出会う前は一人なんて平気だった
寧ろ、一人の方が楽だった。
異能を遣い、品を盗んだ。金を盗んだ。
色を掛けて大人を騙した。私を貸した。
其れが当たり前だった。
誰かに助けてもらうこともなく。
一人明日を生きるために悪になる。
其れが何の変哲もない毎日だった。
なのに…
なのに……
中也の暖かさに触れた。
人といることの幸せの味を覚えてしまった。
我儘になってしまった。
羊もバラバラになり。中也とも離れる。
そうなったとしても、昔のように過ごせば良いだけ。
だけど幸せの後味が邪魔をするの。
今日くらいは泣いてもいいかな。
明日からは頑張れる筈だ。
だって今までもそうしてきた。
『っ…ふっ…っ………』
『っ……ヒクッ…』
ポタポタ。
ムカつく位に奇麗な星空の下涙を流した
私もあの星のように綺麗なら良かったのに
その日は、人が通らなさそうな路地裏に行き一夜を過ごした
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作者名：夢幻泡影（むーにー） | 作成日時：2022年8月11日 8時
