３話 ページ9
『月日は百代の過客にして 行き交ふ年もまた旅人なり』
これは、日本の歴人 “松尾芭蕉” の紀行文、『奥の細道』の序文だ。
現代文に直すと、
『月日は永遠の旅人であり、来ては過ぎる年もまた旅人のようなものである』
と、いう意味になる。
なぜ、オレがいきなりこの文を出してきたかというと、確かにそうだ と、納得したからである。
過ぎ去っていく年は、まさに「旅人」。
松尾芭蕉は、旅に出たいという気持ちで書いたんだっけか？
オレの場合は、ただ単に「月日の流れは、目の前を通り過ぎる旅人みてぇに速えなぁ…」って、思って使ってみただけなんだがな。
さて、本題に入ろう。
オレが “奥の細道” の序文を出してきたのには、上に書いた理由と、あともう一つある。
それは、今日が入学式当日であるということだ。
あっという間に2ヶ月が経ち、半月前から日本に来た。
並盛というところがどこにあるかなど、文明機器を使えばすぐにわかるのだがベアータさんの計らいで息子さんが空港まで迎えに来てくれて、なみもり民宿まで連れて行ってもらった。
余談だが、ベアータさんの息子さん夫婦と、息子さんの奥さんのお母さんは、オレが日本語を話したときとても驚いた顔をしていた。
息子さんまで驚いてたのは、民宿に着くまでずっとイタリア語で話してたからだ。
あーそうだな。あと、日本に来て半月、オレが何をしていたのかを説明しよう。
まず、1日目と2日目は、自分の部屋となるところを掃除した。(イタリアから届いた荷物を整理したりな。)
そんで、3日目からは近辺探索だ。
迷子になるのも嫌なため、ベアータさんの息子さんの奥さんに、案内してもらった。
ついでに地図ももらった。
この奥さんは聡子さんと言い、土日以外はパートをしているらしい。
買い物ついでに案内してもらったが、ある程度地理は頭に入った。
まあ、後は適当に日本語勉強してた。
場面を今日に戻して、話を進めるぞ。
しっかし、話には聞いてたけど、本当に入学式とかってなげぇのな。
しかも、難しい日本語ばかりだ。まぁ、わかるんだけどな。
ぼーっとしながら人の話を聞くのも飽きたオレは、目だけ動かして周りを観察した。
すると、面白そうな人間を見つけた。いや、正確にいえば、面白い髪型をしたやつを見つけた。
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作者名：奈宇 | 作成日時：2017年11月13日 21時
