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誤解を招かれてはこちら側も迷惑だ。
オレは両手をブンブンと振り、否定の意を表した。全く、どうしたらそんな考えまでに至るのだろうか。心底謎だ。
確かにオレはラテン系のイタリアから来た。が、別にそんな女をナンパする趣味なんて残念ながら持ち合わせちゃいねぇ。
「そうなの？まあ、友達はすぐに作っておいた方がいいわよ。自分が困った時楽だから。」
うふ、と口角を上げて笑う。
表情がコロコロと変わる人だ。喜怒哀楽とはオレには程遠いものだとしみじみ痛感する。
「ご忠告ありがとうございます。ええ。是非明日にでも友人を作りたいと思っていますよ。」
安定してきた作り笑いを浮かべ、おばさんにそう返した。案外すぐに作り笑いだとバレると思っていたのだが、なかなかバレないようでとても楽しい。
「そうしなさい。そうしなさい。
あ、それで、忠告ついでにおばさんの誘いも聞きなさい。」
何が楽しくてそんなに笑えるのか。どうして口角がそんな自然に上がるのか。不思議でならない。
「ふふ。はい。承知致しました。では、荷物置いたら伺いますね。」
ああ。どうしてオレは作り笑いができるようになったのだろうか。
昔はあんなにも嘘が嫌いで、真っ当に生きていたというのに。
その後、おばさんは帰っていった。バックレてもいいのだが、ここでそんな事をやってしまえば作り笑いの数々が無駄になる。
そんな事は絶対にしたくない。
仕方がないので、オレはため息をひとつつき二階のオレの部屋へ荷物を置きに行った。
服はどうするかとしばし悩んだ末、生卵と習字の書体でプリントされたTシャツに、ジーンズを履いていった。
このTシャツは日本へ来る前に、ウリッセさんから貰った。
「いかしているのでしょう？」そう自信満々な顔で差し出されたら、いくら要らないと思っても受け取ってしまう。
「生卵」がいかしているとは思えねぇ……。
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作者名：奈宇 | 作成日時：2017年11月13日 21時
