立浪草 (ページ18)

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18輪目ページ18

遅くなっちゃったな。

バイト帰り。

暗い夜道。

いつもの道。

あと1時間で日付が変わる。

明日はパパの誕生日か…。

もう50になるんだしそろそろ世代交代かな。

まぁ、私には関係ないけど。

横断歩道を渡り足早に自宅へと向かう。

「あ、あの…千ヶ崎A…さんですか…？」

不意に声をかけられ振り返る。

「えっと…はい、そうですが」

なんで私の名前知ってるんだろう。

大学にこんな子いたかな。

オドオドとした同い年くらいの女の人が立っていた。

大学でもバイト先の人でもない、バイト先の常連さんでもない人物。

人の腕2本分の距離があるとはいえ誰かも分からない人に名前が知られているのはかなり怖い。

たとえ同性でも。

「そうですよね、貴女が千ヶ崎Aですよね…」

徐々に様子が可笑しくなっていく。

何…この人…。

もしかしてパパの…。

瞬間的に走り出した。

走り続けもうすぐ自宅というとこで服を引っ張られ裏路地に引きずられる。

「なんで逃げるの…やっぱり知ってるんだ…なんで…なんでなんでなんで!!!」

地面に押し倒され馬乗りになられた。

もう逃げられない。

「あんたのせいで…伊織くんを返してよ!!」

誰のことよ!!!

そう言おうとした瞬間、腹部に激痛が走る。

「いｯ…?!」

視線を腹部に下ろすと白い服が赤く染っていく。

相手の女性の手にはナイフ。

「ただでは死なせない…!伊織くんの倍、苦しんで死ね…!」

「まｯ…て…!貴女が言っている人は誰…？私知らない!!」

「とぼけないで。伊織くんは…あの人は…私の大好きだった彼は…!貴女を殺す依頼を受けてからもう2週間も経つのに帰ってこないのよ」

腹部の傷口に電磁波でも流しているようなビリビリとした痛みが走る。

「うｯ……ァｯ?!」

「あんたが殺したんでしょ……無能力者と騙って本当は能力あるんでしょ」

「ちがｯ……!」

「そうやって嘘ついて大勢殺したのね…死神が……私が何十回、何百回もこのナイフで貴女のこと刺してあげる」

そう言ってナイフを両手で振り上げる。

そんな彼女の表情がとても悲しそうに見えた。

あぁ…私って…ほんと…。