Episode.１０ ページ12
Aside
．
優「 A，立てるか？ 行くぞ！」
『 ぇ…何が，どうなって…。』
優「 良いから，早く逃げるぞ！」
え……逃げるって…？
俺は優に腕を引っ張られ，無理矢理立たされる。優は逃げるって言ってたけど……
『 ミカは…？』
優「 ッ！ 行くぞ……。」
ミカの事を優に聞くと，唇を噛んで，今にも泣き出しそうな震え声でそう言って，また俺の腕を引っ張り，走らせる。
『 なぁ！何でなにも言わないんだよ！ミカは？ミカはどうすんだよ！！』
優「 ッ……。ミカは，おいてく…。」
『 何で！！』
優「 ミカが……それを，望んだんだ…。」
『 ッ…そんな…。』
俺は走りながら後ろを振り返る。その時にミカと目が合った。ミカは目が合った瞬間，微笑んでいたような気がする。
俺は，どうしてもミカも連れて行きたかった為，届かないと分かっていても，ミカの方に手を伸ばす。だが，今まで以上に優が力強く俺の腕を引いた。
優「 …諦めろ……。俺だって嫌だよ！」
そう言って，中々動かない俺に痺れを切らしたのか，俺を横抱きし出口から出る。
『 嫌だ！ミカも一緒に出るんだよ！ミカ！ミカッ！！』
優「 うぅぅ……ぁあああ！！」
．
泣き叫びながら，俺と優はひたすら逃げた。
逃げて逃げて…ようやく外の世界に出た。
『 …優。降ろしていいよ……。』
優「 あ，あぁ…。」
優に降ろしてもらうと，裸足に冷たい感触が伝わった。これは……雪？
優「 やっと…やっと外に出れたのか？」
『 …あぁ，そうだな。』
久し振りに見る外の世界は，あまり昔と変わっていないように感じた。
『 ッ！ 足音が聞こえる。まさか，他の吸血鬼が追ってきたのか？』
優「 逃げるか？」
『 ……いや，少しだけ待ってみる。』
二人で息を殺し，足音が遠ざかるのを待つが，一向に遠ざかる気がしない。逆に，どんどん俺達の方に近づいてきている気がする。
俺と優はその方向をじっと見つめる。奥から人影が近づいてきているのがはっきりと分かり，無意識に構える。
？「 よし居たぞ。予言通りだ。」
いつの間にか目の前に，黒い服を着た奴らが立って居た。ふと，周りを見渡すと，他にも５、６人ほど同じ服を着た奴らが居た。
見たところ，吸血鬼じゃないみたいだけど…。
？「 少年，吸血鬼が憎いか？」
優「 あぁ，憎いね！家族を殺したんだ！」
？「 そうか。お前は？」
『 俺も同じだ。憎いに決まってる。』
？「 そうか…。」
．
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作者名：音 羽 | 作成日時：2018年9月27日 22時
