悪役 ページ3
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「一年過ぎても、俺たちに近づくな
それがAに伝えてほしいと言われた、子供たちの願いだったよ」
『…うそ、』
そう呟けばお館様は表情を崩さず「本当のことだよ」と残酷なことを仰る。
途端に背中に鉛のような、重いものがのしかかったような感覚に陥った。
胸が締め付けられる。
何れはこうなることを察していた。
わたくしの態度は最悪で、素直になれなくて、人を貶すことしかできない私には、こういう最後がお似合いなのだろう。
人に見放され、笑われる最後が。
…分かっていても、悲しいものだ。
『…分かりました。柱という貴重な存在が「一年」もいなくなるのを彼らは望んでいる、そういうことですわね?』
自分はこういう言い方しかできない。
素直になりたいのになれない、それがとてつもなくむず痒い。
「口が悪いよ、A。
こちらとしても柱が一人いなくなるのはとても残念なことだよ」
にこりと微笑むお館様の笑みの中に、普段感じない冷酷さを感じた。
彼もわたくしに呆れているのだ。
…お館様には、味方をしていてほしかった。
本当のわたくしを知っている、お館様には。
なんて考えるのは、我儘すぎるわね。
『ではわたくしも彼らに一言、宜しいでしょうか?』
そう言うとお館様は耳を傾けてくださった。
なんてお優しい方なんだろう。
彼はわたくしの事を見放し、できることならもう会いたくないと考えているのだ。
なら、悔いがないように、わたくしも行動しなければ。
息を大きく吸い込み、心に隙間を開けた。
自分にゆとりがないと、このようなことを言うことなんてとても無理だ。
お館様はわたくしの準備を待ってくださった。
そのお陰で十分に準備できて、そして表をあげ、高らかに告げた。
『貴方達に興味を惹かれたわたくしが馬鹿だった。もう貴方達への興味は削がれた。
ということで安心なさって?貴方達の姫君には指一本触れない、さようなら。
…そうお告げください』
貴方達が幸せになるなら、わたくしは悪役を演じましょう。
そう意味を込めた言葉。
気づいてくれるかしら?
いえ、きっと気づいてくれないわね。
______…お姫様に夢中なのだから。
そしてにっこりと笑った。
「こうして笑うんですよ」
そう教えてくれたしのぶを真似して。
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Nami - 面白かったです!夢主ちゃん今後どうなるのかな?続き気になります。 (8月20日 16時) (レス) @page5 id: 7f8b02d024 (このIDを非表示/違反報告)
ロア - おもろ (2022年9月13日 17時) (レス) @page5 id: f71c6b27b8 (このIDを非表示/違反報告)
まかろん - 物凄く面白かったです!!!家燃やした犯人が気になる〜!実はツンデレだった悪役令嬢可愛いすぎる!更新頑張ってください!!!応援してます!!! (2020年4月21日 22時) (レス) id: 349227220e (このIDを非表示/違反報告)
律 - とっても面白いです!!これから頑張ってください! (2020年3月29日 15時) (レス) id: bfc3e39400 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりなんぽん - はいどうもです。イケメンになりたい。様の作品全部見ているものでーす。(しつこいね☆)自分は悪役キャラなんですよ。劇をやるときは必ず悪役がやりたい!関係なかった…作品の展開が楽しみです!頑張ってください! (2020年3月23日 15時) (レス) id: 3ac698d03c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イケメンになりたい。 | 作成日時:2020年3月21日 20時