僕、憑かれました。その2 (ページ4)

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side Yuri

特に目的はなかった。
なんとなく外に出て、学校近くの公園まで歩いてた。

なにも考えずにボーっとしながら歩いてたからかな。

「……しまっ!」

信号が赤になってるのも、トラックが来てるのも気づかなかった。

逃げたくても、足がすくんで動けない。
もうぶつかる。

怖くて目を閉じた直後、後ろから衝撃が来た。

「気をつけろ！」

運転手らしき男性の怒声が聞こえる。
そっと目を開けると、横断歩道の向こう側。

僕は誰かに突き飛ばされたおかげでトラックとの衝突から免れたみたいだ。

「あの……ありがとう」
「……んな」

その誰かに視線を向けると、この間会ったばかりの伊野ちゃん。
だけどこの間とは全然雰囲気が違う。

なんか怒ってる？

「ふざけんな！なにやってるんだよ。なにがあったか知らないけど、命を投げ出すなよ！」
「へ……？」

突然早口で怒られる。

命？投げ出す？まさか……

「死ぬつもりはないよ。ただの僕の不注意」
「は？不注意？」

早とちりしたのに気づいて恥ずかしくなったのか、伊野ちゃんが顔を赤らめる。

その反応や話し方。
なんでかな、ひかみたいだ。

「……びっくりさせるなよ。不安だったんだからな」
「ごめん」
「おまえ、昔から周りのこと気にして相談しないから、なにか嫌なことあったんじゃないかって思うだろ」

この間会ったばかりのはずの伊野ちゃんが、まるで昔から一緒だったかのように呟く。

「え、伊野ちゃんなんで……!!」

驚いて数回瞬きをする。

疲れているのだろうか。
伊野ちゃんがいたはずのそこに、もうこの世にいないはずのひかがいた。