ようこそ ページ1
《ようこそ、#コンパスへ》
聞き慣れてしまった結月さんボイスの音声で意識をが戻り、瞼越しでも魘される光に思わず、眉を顰める。
もしかして、携帯の電源の切り忘れでもしたかな……。だとしたら充電ヤバイな。支度が終わるまでにどの位充電されるだろうか。そういや、今日の持ち物なんだっけ……。昨日の夜準備したっけな……。
記憶を辿ろうと試みるも、殆どの記憶が無い。
ドクッドクッと心臓は強く、早く、煩くなっていく。
額と背に僅かな水滴が滴るように伝う。
必死の思いで身体の神経に伝令を送り、筋肉を動かす。そして、なんとか短い時間の中で目覚めることに成功した＿＿＿＿のだが。
「フム、ドウヤラ ジッケン ハ セイコウ シタヨウデスネ」
白と水色のメタルボディがいつもならあり得ない、目と鼻の距離にいる。
「いつも」がいつのことかはわからないが、顔面ドアップがあれば、後退するのが当然の反応。寝起きのタンパク質に無茶をさせ、背中に聳える垂直の壁に寄りかかるまで後退りをし、様子を見る。
「プ……ゴウ…14…25…ハンノウカクニン」
流石に離れ過ぎたのか、あの浮遊する機械が何を言っているのか、聞き取れない部分が多い。けどまあ、何とか言いたいことは推測できる。
「コレヨリ、アバターセイセイ二ウツリマスノデ、ジットシテイテ クダサイネ？」
また、視界の8割をメタルボディで埋め尽くしてくるロボットに浮かんだ、微笑みの目に恐怖を覚え、目を瞑る。
「ボイロイド、丁度良かった。今まで見たことのないエラーメッセージが表示されてな。応対してほしいのだが……」
ゆっくりとした足音と、胸まで響くような低い声が耳を通っていく。
「アレハ シバラク ヒツヨウナクナッタノデ、 ソノママ デ ダイジョウブデスヨ」
ロボットと共に、声の主を辿ってみる。
ピンク髪のオジ様……？珍しい髪色だが、妙にしっくりくる。それだけじゃない。妙に色気が増幅されて漂っている。
そのオジ様は、ロボットの発言内容に驚いたのか、目を一瞬だが、驚いた表情をしてみせた。
刹那、
「ハビーと会わせないっていうなら壊してやるー！！」
「させんぞ！テヤァ！」
銃声とそれを弾くような音が鳴り響いた。
「……シカタナイデスネ。ツイテキテクダサイ」
ロボットに手を引かれ、引き摺られるようにして白い空間を移動する。
ピンク髪のオジ様とすれ違いざまに、鋭い眼光で貫かれるような視線を受けたのは気のせいだと信じたい。
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作者名：四尾狐-Sibi- | 作成日時：2019年1月11日 20時
