ただ、君だけ。〈番外編〉(ymin)

【高木 雄也が決めたこと。】 ページ19

突然、伊野尾くんに相談したいことがあると言われて、呼び出されて。
何かと思えば、山田とのことで。
内容については割愛するけど。
だって、それよりも伊野尾くんが俺に相談事、というのがびっくりしたから。


最初、正直、何で俺に？って思った。
だって、俺は伊野尾くんを傷つけたから。


距離をとり始めた伊野尾くんに声をかけられた時。
うまく答えることが出来なくて。
戸惑った俺に、伊野尾くんは、顔を哀しみに歪ませて離れていってしまった。
それでも、何かを抱える伊野尾くんを、俺は助けたいと思ったから。


“伊野尾くん。
何があっても俺たち伊野尾くんを支えるから。
だから話してみてよ。”


伊野尾くんのために、何かしたくて。
伊野尾くんの心が少しでも軽くなればって。
それだけを考えて、告げた言葉は。


伊野尾くんのことを傷つけた。


俺の言葉を聞いた伊野尾くんの、表情が消えてしまった、あの時の顔が。
すごく目に焼き付いてる。
俺が、あんな顔させた。
いつもの伊野尾くんから、まるで想像がつかないくらいの。


だから、俺はもう伊野尾くんに関わらない方がいいんじゃねぇのかな、って。
そう思ったんだ。


事件が全部終わった後も、なかなか伊野尾くんと話せなくて。
まさかこんな風に、相談とかしてもらえるなんて思いもよらなくて。


思わず口から出たのは、嬉しい、って言葉。
伊野尾くんは、嬉しいって何だろ？って顔してたけど。


相談事全部を聞き終わってからは、久々に他愛のない話をした。
伊野尾くんと２人だと、いつの間にか話が盛り上がってしまう。
でも、最後に謝罪だけはしたくて。
だから、帰り際に伊野尾くんに、あの時は傷つけてごめんと、そう言った。


そしたら、返ってきたのは、伊野尾くんの笑顔と、力強い言葉。


たかきは悪くないよ。
おれが、何か変な風に考えちゃってたからさ。
今はたかきが俺のこと心配して言ってくれたことだって、ちゃんと分かってる。
ありがとね、たかき。
また、もし何かあったら、今度は、ちゃんと頼るから。
おれのこと、支えてくれる？
もちろんおれも、たかきのこと支えるし、ね！


こんなの聞いて、見捨てるなんてあり得ないっしょ。
頷いたら、ありがと！って、そう言って伊野尾くんは帰っていった。


その背中を見つめながら、自分の肩の力が抜けていく気がした。


彼の言葉に、救われたんだ。


そして、決めた。


俺は、伊野尾くんの味方でいる。


たとえ、何があっても。









END.

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