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「……伊野尾ちゃん？」
「……うん、お腹空いてなくて……」
少し俯いて、そう答える伊野尾ちゃん。
お腹空いてない？
ウソだろ、今何時だと思ってんの？
これ昼のロケ弁だよね？
もう夕方通り越して夜だぞ？
「え、まさか体調悪いの？」
「いや、体調は全然大丈夫……」
「じゃあなんで？
だって伊野尾ちゃんいつもすげぇ食べるじゃん」
「……た、たまにはそういう日もあるって」
「…………」
この間から、自分の差し入れを人にあげたり、おかしいと思ってた。
余計なお世話だって分かってはいるけれど、でも、伊野尾ちゃんはただでさえ細いんだ。
ちゃんと食わないとマジで体調崩して倒れんじゃないかと思う。
「全く何も食べてないの？
身体壊すよ？
俺らの仕事、身体が資本でしょ？」
「わ、かってる、けど、」
頑なに手をつけようとしない伊野尾ちゃん。
仕方ない。
我ながら強引だけど、ロケ弁を自分のとこに引っ張ってきて、開けた。
箸を割って、伊野尾ちゃんの好きな白いお米を摘む。
「ほら、口開けて」
「っや、だからいらねぇよ……」
「いいから食べて、ほら」
「おれほんと、ごめんけどマジでムリだから、」
「ムリにでも腹に入れとかなきゃダメだって」
「イヤだってばッ！！」
バシッ、カランッ……！
手を添えながら口元に運んだ箸を、伊野尾ちゃんが思い切り手で振り払った。
俺も驚いたけれど、それ以上に、振り払った伊野尾ちゃんが目を大きく見開いて、驚いていた。
「あ……ッ」
「い、のお……ちゃん？」
「ごめん、おれ、」
じわじわと痛む俺の手よりも、ずっと痛そうに歪んでいく表情。
そんなに嫌だったなんて思わなかった。
仕方ないなぁもう、お腹空いてないって言ってるじゃん、って笑いながら、食べてくれると思ってた。
「ごめん、俺、ちょっと強引だった」
「や……違う、おれ、」
「本当にごめん。
……でも、何かしら食べてね。
マジで、心配だからさ……」
「ッ、……」
気まずい沈黙が続く。
再び俯いてしまった伊野尾ちゃんにこれ以上掛けていい言葉が見つからない。
完全にミスした。
はぁ、と１つため息を零して、その場から去ろうと席を立つ。
その時だった。
ぱたり。
静まり返った楽屋内に、響いた水音。
零れ落ちた伊野尾ちゃんの涙が、机に当たって立てた、音。
「……え……？」
「っごめ、何でもない……！」
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りりた(プロフ) - shootingstarhapさん» ずっと応援していただきありがとうございました。コメントがとても励みになっておりました。長いこと更新を停めてしまうこともあったにもかかわらず、本当に嬉しかったです。少しでも、楽しんで頂けたなら幸いです。本当にありがとうございました！ (2020年6月16日 18時) (
レス) id: bd2ed28c98 (このIDを非表示/違反報告)
shootingstarhap(プロフ) - 更新心待ちにしていました…！嬉しいです！今回もボロボロに泣いてしまいました…伊野尾さん、食べれて良かったです…。本当に良かったです。素敵なお話しありがとうございます！ (2020年6月16日 18時) (レス) id: 29c1b2b83b (このIDを非表示/違反報告)
shootingstarhap(プロフ) - 更新楽しみに待っていました！皆の所に元気に戻ってきてくれて本当嬉しいです！りりたさんのお話しまた楽しみに待っています！ (2019年11月11日 16時) (レス) id: 29c1b2b83b (このIDを非表示/違反報告)
うさこ(プロフ) - やっと思いが通じ合って嬉しいです。大好きな作品です。切なくてもどかしくてどうなるのかと思ってましたけど嬉しい展開でまた好きになりました。いつもありがとうございます。 (2019年6月30日 23時) (レス) id: 1d86e2ca18 (このIDを非表示/違反報告)
shootingstarhap(プロフ) - りりたさんの更新待ってました！お忙しい中ありがとうございます！(^-^)本当良かったって最新のお話し見て物語に入り込みすぎてて泣いてしまいました…。りりたさんのお話しは本当素敵でよく泣いてしまいます。またお話し楽しみに待っています(^-^) (2019年6月30日 16時) (レス) id: 841a63da71 (このIDを非表示/違反報告)
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