ただ、君だけ。〈IF〉(ymin)

＊ ページ33

「ぇ、ここ、って……」
「俺の姉ちゃんの友達がやってる店。
口堅くて、信頼も出来るから安心していいよ。
……オーダーメイドの、リングとか作ってるんだ」


広いスペースに、ガラスケースがいくつか置かれ。
その中には、輝く宝石のあしらわれた、指輪やネックレスが飾られている。
いわゆる、ジュエリーショップのようなものだろうか。
生まれて初めて入った、こんなお店なんて……。


「いらっしゃいませ、お待ちしておりました」
「今日は本当にありがとうございます。
宜しくお願いします」
「こちらこそ宜しくお願い致します。
お姉さんからもお話は伺ってますよ。
こちらでデザインについてお話ししたいと思いますので、どうぞ」


奥から出てきた女性に、やまだが話をしている。
この人がやまだのお姉さんの友達みたい。
どんな話になってるのかおれには全く分からなくて、唖然とするばかりで。


「ほら、行くよ」
「ちょ、ちょっと、待って……。
なに、これ？え？どういう、こと？」


奥へと促されたけど、ここで本当に説明をもらわないとと思い、やまだに必死に聞いた。
やまだは、持っていたケーキを女性にお願いして、奥で待っていてほしいと告げて。
頷いて奥へと下がった女性のお陰で、２人きりになった。


「……驚いたよね」
「う、ん……」
「だよね、ごめん」


やまだが、まず謝る。
でもそれは別にいいの。
聞きたいのはそれじゃなくて。


「あの人、は……」
「あれが姉ちゃんの友達。
俺たちのことも知ってる。
他人には話さないって約束してくれてるよ」
「そ、か……え、あの……なんで、ここに……」
「……リングを……プレゼントしたいんだ。
オーダーメイドの」
「……え……」


リング、って……。


ゆびわ……それ、って。


「……ココに、嵌めるためのものだよ」


やまだが、おれの左手をとる。
そして、薬指を自分の親指で優しく撫でてから、口元に引き寄せた。


それはまるで、あの日に誓った口づけと同じ。


「約束したよね。
ちゃんとしたやつを用意するからって。
……今日は、それを作るためにここに来たんだ」
「……あ……っ！」


よく、覚えてる。
やまだと、初めて繋がった日の、朝。
約束をした。
結婚はできないけれど、永遠を誓おうって。


「どう、かな……？
受け取って、くれる？」
「っ、当たり前でしょ……っ！」


そんなの、答えはあの時と変わらない。
やまだの傍にずっといるって、おれも誓ったんだから。

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