第１章：覚醒 ページ2
俺が藤堂邸に着いた時見た光景は、まさに惨状だった。
血が流れ、ナイフが２つも転がっていた。
悲劇が起きたのだと思った。
「これは……！！
おい！！新一！！！」
倒れている新一の元へ駆け寄る。
息はある。
一先ずはホッとしたが、新一の足からは血が流れていた。
おそらくこの出血で、新一は意識を失った。
とりあえず止血しなくては。
自らのベルトを抜き取り、傷より少し上の部分を力いっぱい締めた。
これで少しは持つだろう。
早く救急車を手配しなければ。
それに、警察も。
倒れる新一の隣に視線を移す。
そこには、寄り添うように横たわる万紀子さんがいた。
既に亡くなっていることは、白い服の左胸に当たる部分が背中まで赤いことから分かった。
……殺したのは、日下だ。
日下は、２人から少し離れた壁際に凭れて座っていた。
手にはスマートフォンがある。
「……さな……さ……」
「日下……お前どうして……」
日下はかろうじて生きていた。
新一のように意識を失いかけている。
彼もまた、血を流していた。
新一が日下より先に意識を失ったのはおそらく、新一が１番最初に刺されて失血したからだろう。
日下の身体の前面部に傷が見えないから刺されたのは背中というところか。
だが、出血はひどい。
このままでは彼も死んでしまう。
救うかどうかは、俺にかかっていた。
それを決める前に、まず尋ねる。
彼は、何故俺に電話をしてきたのか。
その理由が聞きたかった。
「どうして、俺に電話をしてきたんだ」
「…………って……んいち、くん……」
朦朧としているのだろう、口を懸命に動かすも途切れ途切れでよく聞こえない。
近づき目線を合わせるためにしゃがんで、よく耳を澄ませた。
「……し、いちく……を……死なせ、たく……ない……」
日下の目から、大粒の涙が溢れていた。
そのまま、彼は意識を失った。
彼の言葉を聞いて、俺は決意した。
スマートフォンを取り出して警察と救急車を呼んで、新一と万紀子さんのことは任せることにした。
俺は日下を抱き上げ、自分が乗ってきた車に乗せた。
専属の運転手は口の堅い男で、何も言わずにただ車を走らせる。
そして、警察と救急車が来る前に藤堂邸を後にした。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 187人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りりた(プロフ) - 冬さん» ありがとうございます、なんとか時間を作って更新したいと思います、今しばらくお待ち下さい。 (2018年11月29日 18時) (
レス) id: 068b0a2ee5 (このIDを非表示/違反報告)
冬 - とても面白いです！！！続きが気になります！！更新頑張って下さい！！！ (2018年11月29日 1時) (レス) id: 6f8cf75a15 (このIDを非表示/違反報告)
りりた(プロフ) - 白米プリンスさん» コメントありがとうございます、気付くの遅れてすみません…！ありがとうございます！そし誰見返す度に日下ロスに陥り、とうとう妄想を始めてしまいました(笑)ちょっとずつ頑張りますので、宜しくお願いしますm(_ _)m (2017年9月21日 9時) (レス) id: 068b0a2ee5 (このIDを非表示/違反報告)
白米プリンス(プロフ) - まさか「そし誰」の続きがりりた様の作品で読めるなんて…！ただいま絶賛感動中でございます。そしてバーテンダーの伊野尾様を思い出して悶える始末です(ただの変態)これからは更新の通知が来る度飛んで来ようと思います笑 (2017年9月12日 17時) (レス) id: bc3c2630ce (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
