第207話 ページ41
「思ったより警戒してないんやね」
「舐められたくないから、そう見えてるなら安心ね」
私の向かい側に座った西条千晶が、手にしていた木の箱をテーブルの上に置いて組み立て始める。
「もっと府警さんの真ん前とかに呼び出されると思ってわ」
「話すならきちんと話したいじゃない?」
西条千晶はニヒルに笑って組み立てた盤上に駒を並べる。
「………チェス」
「ルールはわかる?」
「それなりに」
準備が整ったところで、私は店員さんを呼ぶ。
「コーヒー?紅茶?」
「コーヒー」
「……意外」
「カフェイン中毒なもんで」
注文を済ませて、駒に触れる。白の彼女からゲームは始まった。
「どうして共犯なんか?」
「初めから手伝うつもりはさらさらなかったんやで?おじさんが勝手にうちの写真を持っているのをたまたま知って問いただしただけやし、せやからすぐに警察に言うつもりやってん。けど、おじさんの言ってた計画の毛利探偵から、他にも同行者を連れて行ってもいいかって連絡が来て、そのうちの一人の名前があんたやったのを知った時にうちも手伝おって思ってしもてん」
「…なんで私なんかに?」
「模試。うちの家はずっと厳しくてなんでも一番取れゆうロクでもない家やねん。全国模試もせめて上位五位には入らんとかんとどつかれる。うちなんかまだええ方や、兄ちゃんなんか男やからゆうて模試でも一番取れゆわれとったもん。けど、兄ちゃんはそれが出来た。うちには出来んかった」
「……私が高校2年から全国模試を受け始めたから」
「そうや、高一の時にはなかった名前が高二の夏にいきなりバァーンと上位に入って、別にそれは珍しいことやないねん。高二になったら受験勉強始める奴なんかぎょうさんおるさかい別にどうってことないねん。ただ、うちがその頃からどないにやってもええ結果が出されへんかっただけやねん。今思ったらの話やけどな?あの時には、あんたを理由にせんとやっていかれへんかってん」
全国模試なんて帝丹の先生に何の気なしに勧められたから、暇つぶしに受けたに過ぎなかった。その方が、高校生っぽいだろうし、組織の仕事も休めるし、私がどのくらいの成績なのかもわかって面白いだろうし。
余計な好奇心と怠慢で、今を生きている高校生を傷つけたと、今ようやく私は気がついた。
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黒木(プロフ) - 毬莉さん» コメントありがとうございます、一気読み!?嬉しいです、今後とも本作をよろしくお願いします! (2020年9月16日 19時) (レス) id: 12a6d1a355 (このIDを非表示/違反報告)
黒木(プロフ) - りーさん» ありがとうございます、嬉しいです。更新致しました、読んでいただけたら幸いです、 (2020年9月16日 19時) (レス) id: 12a6d1a355 (このIDを非表示/違反報告)
黒木(プロフ) - リオさん» こちらこそコメントありがとうございます!正解です!!キャラが関わるほどではなかったのでクロスオーバーのタグ等はないのですが、誰か気がつかないかな〜なんて思って書いたんです。ありがとうございます! (2020年9月16日 19時) (レス) id: 12a6d1a355 (このIDを非表示/違反報告)
黒木(プロフ) - もってり子さん» ありがとうございます。嬉しいです、更新致しました、楽しんでいただけたら幸いです! (2020年9月16日 19時) (レス) id: 12a6d1a355 (このIDを非表示/違反報告)
黒木(プロフ) - 液体さん» コメントありがとうございます!更新致しました、読んでいただけたら幸いです (2020年9月16日 19時) (レス) id: 12a6d1a355 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:黒木 | 作成日時:2019年8月23日 17時