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「永江」

呼ばれて振り返るとまたいつかの夜のように少し汗をかいた降谷がいた。

「降谷、こんばんは」

「……なんかあったのか?」

そんなに暗い顔をしていただろうか、彼は気遣わしげに私を見つめる。

「特に何も、あったとすれば今日1日ずっと良くないことばっかりだったことかな?」

「あぁ、数学……」

「その節はありがとうございました」

私がお礼を言うと降谷はなんでもないと言うように肩をすくめた。

「それから怪我もしたんだろ?大丈夫か?」

「!よく知ってるね」

「体育の後保健室に入っていくのを見かけてな」

「そっか」

相変わらずの観察力だと感心する。

「………今日は俺が何か奢るよ、何買いにきたんだ?」

目の前で煌々と光るコンビニを降谷が指差す。

「………甘いの。すっごく甘いのが食べたい」

私がそう答えると降谷は一つ頷いて私の手を引いてコンビニへと入る。

「甘いのって、チョコとか?」

「クリームも捨てがたい」

「じゃあこれとか?」

「あぁそれめっちゃ美味しそう」

同意を示すと降谷はチョコシューを取ってレジへと向かった。

「降谷は何も買わないの?」

「ん、あぁ気分じゃなくて」

ポケットから財布ではなく直接小銭を出して支払う降谷を意外に思う。

「財布に入れてそうなのに、意外」

「走る時だけ。かさばるから」

「成る程」

レジカウンターに置かれた二百円が鈍く光 る。
もしかしたら降谷は自分用に二百円しか持ってきてないのではと、そんな都合の良いことを思った。


私の家までは並んで歩く。
降谷はポケットに手を突っ込んで楽しげに目を伏せているだけで絵になっていた。
私たちはたわいの無い話をして夜道を歩く。
基本的には私はチョコシューを食べているので降谷が話をするのだが、降谷は私の表情だけでなんとなく言いたいことを理解してくれたので、不思議と会話になっていたように思う。

「また明日ね、ありがとう降谷」

「あぁまた明日」

走り出した背中が見えなくなるまでそっと門扉の中から見つめる。

気分は幾分かマシになっていた。

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Lailah(プロフ) - めちゃくちゃ良かったです。テーマの作品2つにも納得が行きました。その後の話も見てみたかったですがこれはこれで良かったです。良き作品を見せてくれてありがとうございます。 (2021年7月5日 12時) (レス) id: 59f1e2127c (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - とても素敵な作品で、泣いてしまいました(笑)続きを作ってくださるのなら、楽しみにしています! (2021年5月6日 19時) (レス) id: 2fea210edb (このIDを非表示/違反報告)
澪華 - ↓ごめんなさい誤字です。正しくは「楽しく読ませていただきました。」です。 (2020年11月23日 5時) (レス) id: e31bd2e13b (このIDを非表示/違反報告)
澪華 - とても素敵な作品で、楽しく読ませてました。これから二人はどうなるのか、続き楽しみにしてます!頑張ってください! (2020年11月23日 5時) (レス) id: e31bd2e13b (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - とても素敵なお話でした。読むのが止まらずあっという間に読み終わってしまいました。 続きが読めるのを楽しみにしてます!! (2020年11月5日 22時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:雪路 | 作成日時:2020年10月18日 0時

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