42 ページ48
「お嬢ーサン、お昼いーこう」
カツンとヒールの音が止まって私は声のする方を見上げる。
「相変わらず早いね、お昼回ってまだ40秒くらいだよ」
「Aに会いたくて」
「ふふお上手なことで」
ニマァと笑う友人に頷いて、自分のカバンから財布を取り出して立ち上がる。
「行こっか」
ランチタイムは職場の友達とお迎えし合いっこして食べに行く。
「そういえばこないだの合コンどうだったの?あんまりにも良すぎてリアルタイムで感想送ってくれてたけど」
「あ、そうなのそれでねそれでね〜なんと出会った村上君と付き合うことになりました〜」
「えー、凄い、彼パイロットなんでしょ?」
「そうそう、なーんでそんな優良物件が来てくれたのか相手してくれたのかもわからないけどとりま最&高、ワンチャン遊びかもね〜」
「え、それは流石にひどい早輝綺麗なんだし、普通に本命じゃない?」
「ふっふっー嬉しいことを言ってくれるなぁ、だといいんだけど」
エレベーターを降りて表通りに繰り出す。
失敗ばかりの人生にしてはいい職場につけたものだと思う。
出来た友人も上司も部下も私は本当に恵まれている。
結局あんなに努力して挑んだ受験も失敗に終わった。
降谷はずっと私ならいけるなんて勉強も見てくれてたりなんかしてたから合わせる顔がなくて、伝えるのを渋っているうちに暮沢夫婦のもとに母が頭を下げてやって来たのだ。
母としての自覚がなかった。
付き合っていた彼とは別れたのではなく、自分から振ってきた。
どうしてもやり直したい。
と、
結局5ヶ月かけた話し合いのもと私の受かった高校が母の新居から近いこともあり、高校卒業まで月に一回の定期連絡を暮沢夫婦へ忘れないことを条件に私は母との二人暮らしを始めた。携帯は卒業後、小学生から一度も買い換えてなかったことに母が気づいて慌てて買い換えてくれたのだが、そのせいで降谷の連絡先は消えしまい、「結果どうだった?」と尋ねてくれたメールもそのまま一緒に消えていった。
結局大学受験も第一志望校は落としてしまい、母に慰めてもらいながら第二志望校に通い始めた。
過ぎていく日々の中で時々降谷に連絡を入れなかったことが魚の小骨のように引っかかっていたけれど、29歳にもなった今ではもうすっかり過去のことになっていた。
狂おしいほどに満たされたあの夏の夜。
もうその記憶も殆どが風化してしまっている。
326人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Lailah(プロフ) - めちゃくちゃ良かったです。テーマの作品2つにも納得が行きました。その後の話も見てみたかったですがこれはこれで良かったです。良き作品を見せてくれてありがとうございます。 (2021年7月5日 12時) (レス) id: 59f1e2127c (このIDを非表示/違反報告)
はな(プロフ) - とても素敵な作品で、泣いてしまいました(笑)続きを作ってくださるのなら、楽しみにしています! (2021年5月6日 19時) (レス) id: 2fea210edb (このIDを非表示/違反報告)
澪華 - ↓ごめんなさい誤字です。正しくは「楽しく読ませていただきました。」です。 (2020年11月23日 5時) (レス) id: e31bd2e13b (このIDを非表示/違反報告)
澪華 - とても素敵な作品で、楽しく読ませてました。これから二人はどうなるのか、続き楽しみにしてます!頑張ってください! (2020年11月23日 5時) (レス) id: e31bd2e13b (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - とても素敵なお話でした。読むのが止まらずあっという間に読み終わってしまいました。 続きが読めるのを楽しみにしてます!! (2020年11月5日 22時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雪路 | 作成日時:2020年10月18日 0時