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「え、いなくなっちゃったの?なんで?」
「…私が聞きたい」
昼休み。前と同じ席に座り、さほど美味しくもない社食をちびちびと摘む。
「可哀想にねぇ」
その軽い口調に、ほんとにそう思ってる?と思わず聞き返したくなったが、誰かに話せたことで自分の気持ちが少し楽になっている気がした。
「探偵でも雇って捜してもらう、とか」
「無理無理。だって、私キヨのこと何一つ知らないもの。好物くらいしか」
自分で言っておきながら、少し悲しくなった。
キヨは、私に少しでも心を開いてくれていたんだろうか。
「でも、名前くらいは知ってるでしょ?」
名前。ずっとキヨ、としか呼んでいなかったし、本人も本名で呼ばれるのを嫌っていたから触れないようにしていた。
「確か__________「清川拓哉」」
バッと後ろを振り向く。
後ろの席に居る女性社員と、ハモるはずのない彼の名前がハモった。
「あ、あの今なんて」
突然血相変えた女が問い詰めて来るもんだから、女性社員は若干引き気味だった。
「え…?」
「なんて?」
「その…あまり大きい声では言えないけれど、社長のご子息の清川拓也さんが今御病気で隣にいる、って」
そう言って彼女が指さしたのは、うちのオフィスの隣にある病院。
そこの院長とうちの社長が仲が良くて社員だと安くなったりもする_____なんて話も聞いたことがあるが、実際に言ったことは無かった。
「すいません。ありがとうございます」
私がそう彼女に言うと、フジはスマホの画面を見せてきた。
「A…これ」
それは、社長のSNSだった。本名でしか登録できない、例の。最近はあまり更新していなかった筈だけど。
私が覗き込むと、そこには。
まだ中学生くらいだろうか、身なりがきちっとしていて今とは似ても似つかない、如何にも好青年と言った感じのキヨがいた。
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なみの - おわああああああ尊すぎる!!最高!天才! (10月10日 20時) (レス) @page47 id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)
美織(プロフ) - ぴーなつここなつさん» お返事遅くなってしまい申し訳ございません。お楽しみいただけたようで何よりです。読んでいただきありがとうございました! (2022年1月6日 18時) (レス) id: 991747ea37 (このIDを非表示/違反報告)
ぴーなつここなつ - 読む事が止められないです…! (2021年10月25日 15時) (レス) @page47 id: 5cb3497c96 (このIDを非表示/違反報告)
美織(プロフ) - きゅうりさん» 勿体ないお言葉ありがとうございます…!楽しんでいただけたようでなによりです! (2021年3月8日 23時) (レス) id: 991747ea37 (このIDを非表示/違反報告)
きゅうり - とっても面白かったです、、、文才ありすぎです、、、、 (2021年3月8日 23時) (レス) id: 6118eb0aad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:美織 | 作成日時:2021年2月6日 21時