伍夜 ページ5
目を覚ませば、すぐにいい匂いがした。
直ぐに身体を起こす気にはならず、寝返り交じりに匂いのする方向を向くと、パンを切って、皿に盛り付け、その隣には、キラキラと輝いて見えるほどに綺麗に並べられた食事が置いてあった。
「おはようございます、調子はどうでしょう」
『ぁ、大丈夫です』
「朝食の準備が出来ております、お召し上がりください」
『…わ、私が、いただいていいんですか…』
「はい、冷めてしまわぬうちに、どうぞ」
もしかして、肥やして食べるつもりなのだろうか。
そう思うと、とても食欲が湧かないが、元々、死を覚悟して来た身なのだから、最後くらい、贅沢して死ぬのも悪くないんじゃないか。
不思議と、昨日の足の数もあまり痛まない。
手を合わせて、食事に手を伸ばした。
その間も、アングイスさんは忙しなく何かを準備していて、その中には、処分するのだろう、黒い袋の中に、昨日私が着ていたはずの着物が詰められていた。
『…あれ、私…服…』
「随分と着込まれていたので、臨時で私の服に着替えさせていただきました」
『あ、ありがとうございます、わざわざ着替えまで…』
「…いえ」
村では食べたことのない味だったけれども、どれも美味しかった。
ふと窓の外を見れば、広い畑が見えた。
この館の主人は農家に興味があるのだろうか。
随分と広い範囲だ。
気になって、もっと、と見入っていると、後ろから肩を叩かれた。
「A様、こちらにお着替えください」
『は、はい…』
急なことなので驚いてしまった。
受け取った服は簡素なもので、黒い一枚の、足首ほどまであるものだった。
着替えてみれば、お似合いですと微笑まれ、照れ臭くて頰をかいた。
髪を結って貰い、アングイスさんが食器などを下げてくれた後、部屋から出た。
「私は、A様にこの館での生活の教育係として一時的にこちらに来ておりますが、貴女様が、館での役割を理解された頃に、ここから去ります、その為に、今日から、指導を行います」
『し、しどう…?』
「はい、まず、館の構図を頭に入れてください」
そのまま、一日中館内をぐるぐると歩き回り、渡された紙と筆で、一生懸命道を書き留めた。
その際に、許可なく立ち入ってはいけない場所を、重点的に書き留めた。
どうやら、すぐに喰われるわけではないらしい…?
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そういろね(プロフ) - 桃さん» コメントありがとうございます。更新頻度遅くなったりまだまだスランプ気味だったりでご迷惑をお掛けしますが、励ましの言葉をいただけることで頑張れます!これからもよろしくお願いします! (2020年3月5日 21時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
桃 - いつ見てもすごくいいです。しかも、話の内容が自分好みなのですごく見ててすごく面白いです( *´艸`)これからも、頑張って下さい。 (2020年3月1日 19時) (レス) id: 4db1c97773 (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - キングダムペンギンさん» コメントありがとうございます。応援の言葉が励みになります。テストが終われば更新頻度を上げれると思いますので、気長にお待ちください! (2020年2月23日 16時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
キングダムペンギン(プロフ) - 今まで見てきた作品の中でダントツで大好きです…( i _ i )!続き楽しみにしてます!更新頑張って下さい(*'ω'*) (2020年2月23日 5時) (レス) id: a4d7a38948 (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - k-roさん» コメントありがとうございます。一妻多夫ネタめちゃくちゃ好きなんです。沢山の人に愛読していただいて本当に嬉しい限りです、頑張ります! (2020年2月11日 22時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:そういろね | 作成日時:2020年2月4日 23時