弐拾捌夜 ページ28
どごんっ。
大きな音がして、足の進みが止まる。
雨がしんしんと降っており、庭園には行けないし、何だかどんよりとした気分だった為に、エーミールさんに何か本でも借りて読もうと、廊下を歩いていた時だった。
二歩手前の扉前まで戻った。
アングイスさんには、主人の部屋の一つだから、無断での立ち入りは禁止だと言われている部屋だった。
『…あの、大丈夫ですか…大きな音がしましたけど…』
扉を数回叩き、そう問いかけても、返事はない。
勝手に入るのは気が引けるが、倒れていて声も出せないような状態であるならば、ここで去ってしまうのも良いものか、と悩んでしまう。
数分悩んだ結果、誰かを呼んでこようと扉に背を向けた。
すると、がちゃりと音がした。
『___わっ、あ！？』
強い力で腕を引かれた。
大きくてごつごつとした手で、何より、その手の持つ熱が尋常じゃないくらい熱くて。
されるがまま部屋の中に連れ込まれ、乱雑に音を立てて閉められた扉。
優しさなんてものはなく、ベッドに放り投げられ、体勢を崩し転がったままで腕を縫い付けられる。
身動きが取れない中、荒い息が吹きかかった。
「っ、ふー、っ…！は、っ、ふ、…！」
『だ、大丈夫、ですか…どこか、苦しいとか…』
今まで、着ている服のせいで見えなかった目元が、少しあげられた顔によって、見えた。
真紅で、獣のように欲に染まった、そんな瞳。
先程まで感じていた、妙な違和感はこれだ。
彼の顔が、吐息が、熱が、全てが恐ろしくてたまらない。
叫び出したいほどの恐怖が背筋を走り、それ以上私は喋られなくなった。
『んむ、っ…ん、ん…っ、ぁ、ぅんっ、…！ぁ…う…っ…』
唇を押し当てられたかと思えば、べろりと舐められ、唾液が流し込まれる。
怖い、けど、気持ちいい、口付けで。
でも、泣いたら駄目な気がして、それはもう、すぐに喉を食いちぎられてしまうのではないかというほどの恐怖で。
じわじわと目に薄い膜が貼られ、口付けるこの近い距離でもその人の顔が滲んでしまう。
『っん…っぷは、っ…ぁ…？』
長い口付けが終わると、彼は私の首元に顔を埋めた。
荒い息のままで、匂いを嗅がれる。
何かを探す犬のように、こちらの気など御構い無しな動き。
顔を上げた彼の瞳と目が合う。
ああ、怖い、怖い怖い。
とうとう落ちた雫を見て、彼はほんの少し目を見開き、何を思ったのか、その鋭い歯を私の首元に当てた。
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そういろね(プロフ) - 桃さん» コメントありがとうございます。更新頻度遅くなったりまだまだスランプ気味だったりでご迷惑をお掛けしますが、励ましの言葉をいただけることで頑張れます！これからもよろしくお願いします！ (2020年3月5日 21時) (
レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
桃 - いつ見てもすごくいいです。しかも、話の内容が自分好みなのですごく見ててすごく面白いです( *´艸｀)これからも、頑張って下さい。 (2020年3月1日 19時) (レス) id: 4db1c97773 (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - キングダムペンギンさん» コメントありがとうございます。応援の言葉が励みになります。テストが終われば更新頻度を上げれると思いますので、気長にお待ちください！ (2020年2月23日 16時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
キングダムペンギン(プロフ) - 今まで見てきた作品の中でダントツで大好きです…（ ｉ _ ｉ ）！続き楽しみにしてます！更新頑張って下さい(*'ω'*) (2020年2月23日 5時) (レス) id: a4d7a38948 (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - k-roさん» コメントありがとうございます。一妻多夫ネタめちゃくちゃ好きなんです。沢山の人に愛読していただいて本当に嬉しい限りです、頑張ります！ (2020年2月11日 22時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：そういろね | 作成日時：2020年2月4日 23時
