拾弐夜 ページ12
翌朝、あの感覚が抜けきらず、はふはふと息をしていれば、アングイスさんが濡れた布を額にあててくれた。
少し息苦しい、身体が重くて、動く気分には到底なれそうにない。
そんな私を見かねてか、アングイスさんは急ぎ足でお医者さんを呼んでくると言い、部屋から出て行ってしまった。
『っ、ん…う…』
頭が痛くて、寝返りを打って、目をきゅっと瞑るが、そんなことで和らぐわけでもなく、必死に息を吐いて、熱を逃がそうとしていた。
こんな時には、ふと、人肌恋しくなって、その上寂しさ故に悲しくなってくるもので。
視界が薄く霞んで、枕を濡らしていく。
一粒一粒、静かに落ちていき、弱音を吐いてしまいそうになったその瞬間。
「__アングイス、いるか」
『っ…！』
扉が叩かれ、アングイスさんを呼ぶ低い声。
身体は思い通り動かないし、声も出せそうにない。
それに、こんな顔で会ってしまえば、逃げ出したいのだと誤解されてしまうかもしれない。
穏便に、やり過ごそうと思い、もう一度目を瞑って、息を吐いた。
扉が音を奏でたかと思うと、低い声がもう一度アングイスさんの名を呼んだ。
そして、何かに気づいたような声と共に、扉が閉まる音が響いた。
「…」
感じる視線に、息を飲んだ。
いないと分かれば、諦めて去って行くだろうと思っていたから、涙の跡を隠すことなんてしていなかった。
今も、残った雫がはらりと落ちてしまった。
どうしよう、そんな焦りが頭を埋め尽くして、意味のない考えばかりが浮かんでは消えて行く。
「泣いていたのか、A」
低い声が、鼓膜を揺らす。
目尻を撫でられる感触が、暗闇の中鮮明に伝わった。
否定したいけれど、なんて声をかければいいのか、どんな言葉を伝えればいいのか。
熱に浮かされた思考では、まともな答えなんて出せやしない。
「…愛してる、誰よりも」
淡白な、告白だった。
ごちゃごちゃと、言葉に埋め尽くされた思考を、すっと優しく落ち着かせてくれた。
するりと肌の上を滑るその手は冷たくて、それでも、何処か愛を感じられて。
髪の上から感じた小さな温もりは、もう何かわからない、なんてことはなかった。
「おやすみ、A」
その人が部屋を出て行く前に、私の意識はゆっくりと落ちていった。
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そういろね(プロフ) - 桃さん» コメントありがとうございます。更新頻度遅くなったりまだまだスランプ気味だったりでご迷惑をお掛けしますが、励ましの言葉をいただけることで頑張れます！これからもよろしくお願いします！ (2020年3月5日 21時) (
レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
桃 - いつ見てもすごくいいです。しかも、話の内容が自分好みなのですごく見ててすごく面白いです( *´艸｀)これからも、頑張って下さい。 (2020年3月1日 19時) (レス) id: 4db1c97773 (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - キングダムペンギンさん» コメントありがとうございます。応援の言葉が励みになります。テストが終われば更新頻度を上げれると思いますので、気長にお待ちください！ (2020年2月23日 16時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
キングダムペンギン(プロフ) - 今まで見てきた作品の中でダントツで大好きです…（ ｉ _ ｉ ）！続き楽しみにしてます！更新頑張って下さい(*'ω'*) (2020年2月23日 5時) (レス) id: a4d7a38948 (このIDを非表示/違反報告)
そういろね(プロフ) - k-roさん» コメントありがとうございます。一妻多夫ネタめちゃくちゃ好きなんです。沢山の人に愛読していただいて本当に嬉しい限りです、頑張ります！ (2020年2月11日 22時) (レス) id: 3979da825c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：そういろね | 作成日時：2020年2月4日 23時
