【d!】恋文は破り捨てて。【gr】 (ページ3)

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平和主義を掲げてから、様々な国から外交の申し出があった。
先日の国のように、脅しをかける国々も多かったが、いくつかの大国が、私たちを後押ししてくれるといったような話し合いを持ちかけてきてくれた。
幸い、我が国は鉄鉱石がよく採れる。
それを武器に、貿易国はさほど減らさず、逆に、今まで戦時品に使っていた額を他の事に回せて、国の整備やらが捗っている。

「お久しぶりです、Aお嬢様、貴女とお会いするのは、もう何年振りでしょうか」

『ええ本当に、お久しぶりです、ニシア様』

「随分とご立派になられて、さぞ、お父上様もお喜びのことでしょう」

『いえ、そんな…』

「ああそうだ、是非とも今度、一緒にお茶でもどうでしょうか、貴女の国のことについても、よくお話を聞かせていただきたい」

9人の姉よりも優れていたと言うならば、この容姿くらいだろうか。
父にも、容姿だけはよく褒めてもらっていたし、何よりも、このような舞踏会やパーティーで、いつも連れてかれていたのは私だったのだから、つまりはそう言う事なのだろう。
そのお陰か、国のトップになってから婚約の話をよく持ちかけられる。
困ったことに、そんな余裕もなければ、元々そんな気もさらさらないのだ。
それに、戦争をする国と、我が国とを結びつけようなどと、考えたくもない。

「A、そろそろあの国が到着する」

『分かった、迎えを頼む』

「了解」

総統になってから、初めてまじまじと自国と他国の貿易関係を見たが、その中に唯一軍事物資を輸入していなかったのがこの“我々国”だった。
国が立ち上がって以来、一度も戦敗の話は聞かないし、どんどん勢力を広げていっている一方である。
そして唯一、まだ一度も私が総統になってから外交に来ていない国でもある。
今日初めての対面になるわけだが、正直会いたくない気持ちが強かった。
どの国にも勝る軍国主義。
絶対に馬が合わない、ただただそう思いながら酒を煽っていた。

「グルッペン総統様！」

『…？』

パーティーに参加していた女性達が、一斉に同じ名を呼び、頬を染めながら入口へと駆けて行った。
ぴくとが戻ってきたあたり、グルッペン、というのは、我々国の総統である、“グルッペン・フューラー”で間違い無いようだ。
挨拶をしなければ、ぴくとに明らか嫌そうな顔を笑われながらそちらを見遣れば、その灰色の目と目が合った。
その美しさに、見惚れてしまった。