【d!】恋文は破り捨てて。【gr】 (ページ2)

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「平和国家を目指す、と…？」

『ええ、それが、我が国民の1番の願いです』

「…ははっ、これはこれは、あの偉大な方の娘であれど、末っ子まで行くと、その遺伝子は極端に薄くなられるようだなぁ」

『…』

私には、9人の姉がいる。
父の跡取りとなる息子は授からなかったが、父は私達を見捨てることなどせず、厳しく育てた。
気品高く、意思を強く持つ女性であれば、他国の総統や王子に気に入られ、自身の跡取りである男児を授かれると思ったのだろう。
その前に、父は病気で亡くなったが。
その後、誰の妻でも婚約者でもない私に、跡取りの権利が回ってきた。

「それで、これからの我が国との貿易は、どのように続けていくお考えで？」

『勿論、全て破棄させて頂きます』

「ふ、はっはっはっ！そのようなことをすれば、輸入大国であった君達はどう国を運営していくと言うんだね！」

馬鹿にされるのなんて、もう慣れてしまった。
姉達に散々罵倒されて暴力は振るわれてきた。
どれだけ泣きついても、父は戦争で解決しようとするような思考の持ち主であるために、自身のことを自身で守れない私なんかを、相手になんてしなかった。
だからこそ、私は。
誰かに逆らい、自身の道を行く勇気を手に入れたのだが。

『何か勘違いをされているようですが』

「…？」

『我が国が戦争をしないとなった時、貴方方との安全保障条約も全て破棄、貴方方の後ろ盾はなくなる上に、貿易の破棄ともなれば、貴国の自慢の戦時物資の1番の買い取り手はいなくなる、経済的に苦しいのはそちらの方ではないでしょうか』

「…まさか、本気で平和主義を掲げるつもりか」

『先ほども申し上げました通りです』

「っふざけるな！あの方が作り上げた軍国の名国を穢すのか！」

自身が不利になった瞬間の、人の手のひら返しは何とも滑稽で醜い。
最初からそうであると伝えているのに、最初からそうではないと決めつけるその思考を、誰かが一から作り変えてやらねばならないのだ。
誰も行かぬのなら、私が自ら行ってやろうじゃないか。
戦の中、武器一つ持たずに行くよりも、何倍も死ぬ確率は低いだろうから。

『父が作り上げた国を、私は栄光だとは思わない』

「な、何だとっ！」

『お前らのような、馬鹿の一つ覚えにいつまでも付き合ってやる筋合いはない、貴国との全条約と貿易は破棄、宣戦布告するならば、どうぞ、ご勝手に』

私は、生きていくのだ。