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「聞けば貴女、平和主義なんか掲げたそうじゃない、世間知らずも甚だしいわね、いずれ良いように漬け込まれるに決まってるわ、本当に、何処までも貴女は愚かね！」
その正論も聞き飽きたというのに。
いずれ、戦争をするこの世界も、平和を求めて集団を作り上げては、今の世界を見下すようになるというのに。
この人達は、どうして未来を見れないのだろう。
そんなにも、この血に染まる世界を肯定したいのなら。
最初から、私のことなんて、見えもしないチリとしてでも扱えば良いものを。
弱い貴女達は、いつまでも自身を正当化しようと必死なのだ。
『…たった1人の男にも認められなかった貴女の方が、私から見れば愚か者だ』
「なっ…」
『私は、どんな軍国主義の国であろうと外交は行ってきた、その際に、散々その話をされたさ、しかし、いくつもの国が私の改革に手を差し伸べてくださった、それが上っ面だけだと言うのならそう思っていればいい、貴国のような、下心丸出しの国よりは何百倍も良いだろう』
「いつまで経っても子供なのね！この世界に平和なんて、しかも女である貴女が！誰が本当に救ってくれると思うの、馬鹿馬鹿しい！自分の意見を否定する者達が皆能無しとでも言いたいようだけれど、否定を示すものが正しいのだと、貴女にはまだわからないのかしら」
『どうぞお好きに、要件がそれだけなら、お帰り願いたい、私は貴女のように、好かない相手にわざわざ話をしようとする暇などないんだ』
「嫌よっ、それじゃ」
『旦那様の命令をこなせない、役立たずとでも言われるからか』
「っ…！」
この人は未だ分かっていないのだ。
もう既に、私とこの人との間にできた権力の差も、意識の差も、賭けているものの重さの差も。
何もかも、もう追いつけないまでに離れているのに、いつまで上に立った気でいるのか。
『そろそろ理解した方がいい、私はもう一国の総統という立場なんだ、貴女のように、家族やら夫の知り合いでなければ、本来見る事すら許されない、そんなぬるま湯の世界で生きてはいない、何百万人の命を背負って、自ら命懸けで話をしているんだ、国民を危険に晒すであろう貴国と話すことなど、何もない』
ヘタリと腰を抜かし座り込む彼女は扉前で待機していた使者に任せて、私はその部屋を去った。
廊下の角を曲がったところで、壁にもたれながら呆れ顔で笑ったぴくとを見て、私も震える足を、漸く折り畳んだのだ。
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作者名：そういろね | 作成日時：2019年8月9日 12時
